【HER2陽性乳がん:術後治療(3年iDFS)】「パージェタ+ハーセプチン+化学療法」vs「ハーセプチン+化学療法」

APHINITY(NEJM)                         

切除可能なHER2陽性乳がんと診断された女性は、手術後の補助療法を考える場合、「ハーセプチン+化学療法」に「パージェタ」の上乗せを選択することで3年後に浸潤性疾患が認められず、生活できている可能性が高まる。

リンパ節転移がある人では、「パージェタ」を上乗せすることで、3年無浸潤性疾患生存率が90.2%から92.0%に向上(p=0.02)。リンパ節転移がない人では、「プラセボ」を上乗せした人が98.4%であったのに対し、「パージェタ」を上乗せした人で97.5%と治療間に差はなかった(p=0.64)。

本試験の結果などに基づいて、2018年10月10日、「パージェタ」が「HER2陽性の乳がんにおける術前・術後薬物療法」に対する適応追加が承認された。

【発表】

2017年6月5日

【試験名】

APHINITY(Phase 3)〔NCT01358877/jRCT2080221752

【試験参加国】

日本(愛知県がんセンター、千葉県がんセンター、国立がん研究センター東病院、四国がんセンター、九州がんセンター、群馬大学医学部附属病院、広島市民病院、岩手医科大学附属病院、相良病院、聖マリアンナ医科大学病院、東海大学医学部付属病院、くまもと森都総合病院、京都大学医学部附属病院、新潟県立がんセンター新潟病院、大阪医療センター、大阪国際がんセンター、埼玉医科大学国際医療センター、埼玉県立がんセンター、静岡県立静岡がんセンター、静岡県立静岡総合病、自治医科大学附属病院、国立がん研究センター中央病院、都立駒込病院、がん研有明病院、東京医科大学病院)、米国、アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、カナダ、チリ、中国、コロンビア、クロアチア、チェコ、デンマーク、エルサルバドル、フランス、ドイツ、グアテマラ、香港、ハンガリー、アイルランド、イスラエル、イタリア、韓国、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、パナマ、ペルー、フィリピン、ポーランド、ルーマニア、ロシア、スロベニア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、台湾、タイ、ウクライナ、英国

【原著】

N Engl J Med 2017; 377:122-131. [PubMed:28581356]

【さらに詳しく】

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【トライアル図鑑】APHINITY(HER2陽性乳がん)
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【添付文書における表記】

国際共同第III相試験(APHINITY試験)

HER2陽性(IHC法3+又はFISH/CISH法陽性)の早期乳癌の術後患者(①TNM分類でT0を除くリンパ節転移を有する患者、②原発巣の腫瘍径が1cm超でリンパ節転移を有しない患者、及び③(ⅰ)組織学的/核グレードがGrade3、(ⅱ)HR陰性、(ⅲ)35歳未満のうち、少なくとも1つを満たす原発巣の腫瘍径が0.5cm超で1cm以下のリンパ節転移を有しない患者)4,804例(国内302例を含む)を対象に、術後薬物療法としてプラセボ+トラスツズマブ+化学療法注2)(プラセボ群)と本剤+トラスツズマブ+化学療法注2)(本剤群)を比較する第Ⅲ相二重盲検無作為化比較試験を実施した。プラセボ又は本剤は初回投与量840mg、2回目以降、維持投与量420mgを3週間間隔で、トラスツズマブは初回投与量8mg/kg(体重)、2回目以降、維持投与量6mg/kgを3週間間隔で投与した。本剤及びトラスツズマブの投与が予定された投与から遅れた場合、前回投与日から6週間未満のときには維持投与量を投与し、6週間以上のときには改めて初回投与量を投与し、次回以降は維持投与量を3週間間隔で投与した。本剤及びトラスツズマブは1年間投与した。主要評価項目である乳癌以外の続発性原発癌をイベントとして含まない浸潤性疾患のない生存期間(IDFS)において、プラセボ群に比べて本剤群で有意な延長が認められた。リンパ節転移陽性及び陰性の部分集団におけるハザード比の推定値は、それぞれ0.77(95%信頼区間:0.62~0.96)及び1.13(95%信頼区間:0.68~1.86)であった。

また、安全性については、本剤及びトラスツズマブが投与された2,364例(日本人147例を含む)において、副作用が1,538例(65.1%)に認められた。主な副作用は、下痢780例(33.0%)、発疹346例(14.6%)、疲労280例(11.8%)、悪心206例(8.7%)、筋骨格痛166例(7.0%)、爪の障害165例(7.0%)、好中球減少症157例(6.6%)、口内炎141例(6.0%)等であった。

注1)初回投与における忍容性が確認できれば100mg/m2に増量可能。国内において承認されているドセタキセルの乳癌における用量は60mg/m2(ただし、75mg/m2まで増量可能)である。

注2)アントラサイクリン系薬剤を含む場合は、3週間を1サイクルとして、FEC療法(5-FU500~600mg/m2エピルビシン90~120mg/m2注3)シクロホスファミド500~600mg/m2)、FAC療法(5-FU500~600mg/m2ドキソルビシン50mg/m2シクロホスファミド500~600mg/m2)、EC療法(エピルビシン90~120mg/m2注3)シクロホスファミド500~600mg/m2)又はAC療法(ドキソルビシン60mg/m2シクロホスファミド500~600mg/m2)のいずれかを3~4サイクル投与した後、本剤(又はプラセボ)+タキサン系薬剤(ドセタキセル75mg/m2注1)又はパクリタキセル80mg/m2注4))+トラスツズマブを逐次投与した。ドセタキセルは3週間を1サイクルとして3~4サイクル投与した。パクリタキセルは1週間間隔で12週間投与した注4)。アントラサイクリン系薬剤を含まない場合は、3週間を1サイクルとして、本剤(又はプラセボ)+トラスツズマブドセタキセル75mg/m2注1)カルボプラチンAUC 6mg・min/mL相当量(最大900mg/bodyまで注5))を6サイクル同時併用投与した。

注3)国内において承認されている用量は100mg/m2である。

注4)国内において承認されている用量は210mg/m2(A法、少なくとも3週間休薬)又は100mg/m2(B法、週1回投与を6週連続し、少なくとも2週間休薬)である。

注5)国内において承認されている用量は300~400mg/m2である。