【大腸がん:一次治療(PFS)】「アービタックス+FOLFIRI」vs「FOLFIRI」

CRYSTAL(NEJM)                         

遠隔転移を有する大腸がんと診断された人が初めての治療を考える場合、KRAS野生型であった人では「FOLFIRI」治療に「アービタックス」の上乗せを選択することで無増悪生存期間の延長が期待できるが、KRAS変異型の人では効果が期待できない。

試験では「FOLFIRI」治療に「アービタックス」治療の上乗せによって奏効率が38.7%から46.9%に、KRAS野生型の人では「FOLFIRI」治療に「アービタックス」治療の併用によって奏効率が43.2%から59.3%に向上した。KRAS野生型の人では「FOLFIRI」治療の奏効率が40.2%であったのに対し、「FOLFIRIアービタックス」治療の奏効率は36.2%にとどまった。

FOLFIRI」治療に「アービタックス」治療の上乗せによってグレード3 または 4 の有害事象が起こるリスクが増加する。試験では皮膚反応が0.2%から19.7%、注射部位反応が0%から2.5%、下痢が10.5%から15.7%に増加。

【発表】

2009年4月2日

【試験名】

CRYSTAL(Phase 3)〔NCT00154102

【試験参加国】

アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブラジル、ブルガリア、チリ、チェコ、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシア、香港、ハンガリー、イタリア、韓国、メキシコ、オランダ、ポーランド、ルーマニア、ロシア、シンガポール、スロバキア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、台湾、トルコ、ウクライナ、英国

【原著】

N Engl J Med. 2009;360:1408-17. [PubMed:19339720]

【こちらの図鑑も合わせて見る】

【さらに詳しく】

【添付文書における表記】

化学療法の前治療歴のないEGFR発現が確認された結腸・直腸癌患者を対象とした本剤と5-FU・ホリナートカルシウム・イリノテカン塩酸塩水和物療法(FOLFIRI)併用1) 及びFOLFIRIを比較した第III相試験の成績は次のとおりである。また、レトロスペクティブにKRAS遺伝子変異2) の有無によって層別した成績は次のとおりである(評価可能例:1063例) 。

対象

全症例
(1198例)

KRAS野生型
(666例)

KRAS変異型
(397例)

本剤及び
FOLFIRI併用
(599例)

FOLFIRI
(599例)

本剤及び
FOLFIRI併用
(316例)

FOLFIRI
(350例)

本剤及び
FOLFIRI併用
(214例)

FOLFIRI
(183例)

無増悪
生存期間中央値
(95%信頼区間)

8.9ヵ月
(8.0, 9.5)

8.0ヵ月
(7.6, 9.0)

9.9ヵ月
(9.0, 11.3)

8.4ヵ月
(7.4, 9.2)

7.4ヵ月
(6.1, 8.0)

7.7ヵ月
(7.3, 9.2)

ハザード比
(95%信頼区間)

0.851
(0.726, 0.998)

0.696
(0.558, 0.867)

1.171
(0.887, 1.544)

P値

0.0479

0.0012

0.2648

生存期間中央値
(95%信頼区間)

19.9ヵ月
(18.5, 21.3)

18.6ヵ月
(16.6, 19.8)

23.5ヵ月
(21.2, 26.3)

20.0ヵ月
(17.4, 21.7)

16.2ヵ月
(14.9, 17.9)

16.7ヵ月
(14.9, 19.4)

ハザード比
(95%信頼区間)

0.878
(0.774, 0.995)

0.796
(0.670, 0.946)

1.035
(0.834, 1.284)

P値

0.0419

0.0093

0.7549

1FOLFIRIは以下のスケジュールで投与
イリノテカン塩酸塩水和物を180mg/m2、5-FUを400mg/m2(急速静脈内投与法)、2400mg/m2(46時間持続静脈内投与法)及びレボホリナートカルシウム200mg/m2又はホリナートカルシウム400mg/m2を2週間間隔で投与する。

2KRAS遺伝子コドン12及び13が検討された。

レトロスペクティブにRASKRAS又はNRAS)遺伝子変異3) の有無によって層別した成績は次のとおりである(評価可能例:827例)。

対象

RAS野生型
(367例)

RAS変異型
(460例)

本剤及び
FOLFIRI併用
(178例)

FOLFIRI
(189例)

本剤及び
FOLFIRI併用
(246例)

FOLFIRI
(214例)

無増悪
生存期間中央値
(95%信頼区間)

11.4ヵ月
(10.0, 14.6)

8.4ヵ月
(7.4, 9.4)

7.4ヵ月
(6.4, 8.0)

7.5ヵ月
(7.2, 8.5)

ハザード比
(95%信頼区間)

0.56
(0.41, 0.76)

1.10
(0.85, 1.42)

P値

0.0002

0.4696

生存期間中央値
(95%信頼区間)

28.4ヵ月
(24.7, 31.6)

20.2ヵ月
(17.0, 24.5)

16.4ヵ月
(14.9, 18.4)

17.7ヵ月
(15.4, 19.6)

ハザード比
(95%信頼区間)

0.69
(0.54, 0.88)

1.05
(0.86, 1.28)

P値

0.0024

0.6355

3KRAS遺伝子コドン12、13、59、61、117、146及びNRAS遺伝子コドン12、13、59、61、117、146の変異が検討された。
安全性評価症例600例中、主な副作用(30%以上に発現)は、下痢、悪心、好中球減少症、脱毛症、嘔吐及び発疹であった。