【乳がん:一次治療(PFS)】「アバスチン+パクリタキセル」vs「パクリタキセル」

E2100(NEJM)                           

遠隔転移を有する乳がんと診断された女性が初めての治療を考える場合、「パクリタキセル」治療に「アバスチン」の上乗せを選択することで無増悪生存期間の延長は期待できるが、生存期間の延長は期待しにくい。

パクリタキセル」治療に「アバスチン」治療を追加することで、重症または生命を脅かす有害事象として、高血圧(0.0% → 14.8%)、蛋白尿(0.0% → 3.6%)、頭痛(0.0% → 2.2%)、脳虚血(0.0% → 1.9%)が増加。

本試験の結果に基いて、「アバスチン」は、2008年2月、「パクリタキセル」との併用で転移性HER2陰性乳癌の一次治療に迅速承認された。しかし、その後の追加試験において無増悪生存期間の延長が大きくないこと、全生存期間の改善が示されなかったこと、「アバスチン」を化学療法と併用した場合、重大な副作用が有意に高まることから、2010年12月、FDAは乳癌適応取り消しを決定した。日本では本試験結果を評価資料の1つとして、2011年9月に「手術不能又は再発乳癌」の適応追加が承認。

【発表】

2007年12月27日

【試験名】

E2100(Phase 3)〔NCT00028990

【試験参加国】

米国、カナダ

【原著】

N Engl J Med. 2007;357:2666-76. [PubMed:18160686]

【さらに詳しく】

【添付文書における表記】

HER 2陰性注7)で転移・再発乳癌に対する化学療法未治療患者を対象に、パクリタキセル(PTX)療法を対照群とし、PTX療法に本剤10mg/kgを併用(28日を1サイクルとし、第1日目、8日目、15日目にPTXを、第1日目、15日目にPTX投与終了後に本剤を投与)したときの有効性を検討した。有害事象によりいずれかの薬剤を中止した場合、もう一方の薬剤を単剤にて、同一用法・用量で病勢進行まで継続投与可能とした。第1回中間解析(2005年2月9日データカットオフ)の結果に基づき、試験は早期有効中止された。本剤併用群では、PTX療法単独に比べ主要評価項目である無増悪生存期間(独立判定委員会評価)の有意な延長が認められた。一方、副次的評価項目である生存期間については、PTX療法に本剤を併用することによる有意な延長は認められなかった。

注7)E2100試験では、トラスツズマブ(遺伝子組換え)既治療のHER 2陽性乳癌患者、及びトラスツズマブ(遺伝子組換え)を含む治療が適応にならないHER 2発現不明乳癌患者も登録可能であった。

Grade3以上(血液毒性についてはGrade4以上)の副作用発現率は、本剤+PTX療法群で67.8%(246/363例)であった。主な副作用は、末梢性感覚ニューロパシー24.2%(88/363例)、高血圧15.2%(55/363例)、疲労10.5%(38/363例)、感染9.6%(35/363例)、好中球数減少5.5%(20/363例)、筋力低下4.4%(16/363例)、呼吸困難4.4%(16/363例)、下痢3.9%(14/363例)、嘔吐3.9%(14/363例)、悪心3.9%(14/363例)であった。