【ER陽性乳がん:術後治療(5年iDFS)】「S-1+内分泌療法」vs「内分泌療法」

POTENT(Lancet Oncol)                      

ER陽性かつHER2陰性で、再発リスク高または中程度の人が手術後の治療を考える場合、「内分泌療法(アロマターゼ阻害薬 5年服用、服用できない場合はタモキシフェンまたはフェアストン)」に「S-1」の上乗せを選択することで5年間、浸潤性疾患がなく生活できる可能性が高まる。生存期間が延長できるかはまだ示されていない(HR 0.90(95% CI 0.56-1.44))。

S-1」の上乗せを選択することで増加するグレード3以上の有害事象は、好中球数減少(1%→8%)、下痢(0% → 2%)、白血球減少(1%未満→2%)、倦怠感(0% → 1%未満)である。

本試験の結果に基づいて、2022年2月14日、「S-1」が「乳がんにおける術後補助化学療法」に対する適応追加申請が行われた。

【発表】

2021年1月1日

【試験名】

POTENT(Phase 3)〔jRCTs051180057

【試験参加国】

日本(旭川厚生病院、KKR札幌医療センター、NTT東日本札幌病院、旭川医科大学病院、東札幌病院、函館厚生院、函館五稜郭病院、北海道がんセンター、北海道大学病院、東北大学病院、山形県立中央病院、福島県立医科大学附属病院、北福島医療センター、星総合病院、筑波大学附属病院、水戸医療センター、東京医科大学茨城医療センター、自治医科大学附属病院、群馬県立がんセンター、群馬大学医学部附属病院、埼玉医科大学国際医療センター、埼玉県立がんセンター、さいたま赤十字病院、埼玉メディカルセンター、獨協医科大学さいたま医療センター、亀田総合病院、千葉県がんセンター、東京歯科大学市川総合病院、国立がん研究センター東病院、千葉医療センター、船橋市立医療センター、順天堂大学医学部附属順天堂医院、虎の門病院、東京医科歯科大学病院、国立国際医療研究センター病院、JR東京総合病院、杏林大学医学部付属病院、慶應義塾大学病院、がん研有明病院、東京共済病院、三井記念病院、聖路加国際病院、帝京大学医学部附属病院、東京医科大学病院、東京女子医科大学附属足立医療センター、東京女子医科大学病院、都立駒込病院、都立多摩総合医療センター、国立がん研究センター中央病院、北里大学病院、神奈川県立がんセンター、聖マリアンナ医科大学病院、聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院、東海大学医学部付属病院、横浜市立市民病院、横浜市立大学附属市民総合医療センター、新潟県立がんセンター新潟病院、新潟県立中央病院、新潟市民病院、金沢大学附属病院、石川県立中央病院、金沢医科大学病院、福井赤十字病院、信州大学医学部附属病院、大垣市民病院、岐阜大学医学部附属病院、静岡県立静岡がんセンター、静岡県立総合病院、聖隷浜松病院、浜松医療センター、名古屋大学医学部附属病院、藤田医科大学病院、愛知県がんセンター、小牧市民病院、名古屋医療センター、名古屋市立西部医療センター、名古屋市立大学病院、滋賀医科大学附属病院、京都府立医科大学附属病院、京都第一赤十字病院、京都医療センター、京都桂病院、三菱京都病院、大阪ブレストクリニック、相原病院、大阪警察病院、大阪市立総合医療センター、大阪市立大学医学部附属病院、大阪赤十字病院、大阪大学医学部附属病院、関西医科大学附属病院、北野病院、ベルランド総合病院、淀川キリスト教病院、市立貝塚病院、堺市立総合医療センター、りんくう総合医療センター、大阪医療センター、JCHO大阪病院、大阪労災病院、八尾市立病院、神鋼記念病院、神戸市立医療センター中央市民病院、関西労災病院、姫路赤十字病院、兵庫医科大学病院、兵庫県立がんセンター、大和高田市立病院、日本赤十字社 和歌山医療センター、和歌山県立医科大学附属病院、松江赤十字病院、広島大学病院、県立広島病院、呉医療センター・中国がんセンター 、福山市民病院、徳島大学病院、四国がんセンター、高知大学医学部附属病院、久留米大学病院、及川病院、北九州市立医療センター、産業医科大学病院、福岡県済生会福岡総合病院、九州医療センター、九州がんセンター、久留米総合病院、九州大学病院、福岡大学病院、長崎大学病院、日本赤十字社 長崎原爆病院、熊本赤十字病院、くまもと森都総合病院、うえお乳腺外科、鹿児島大学病院、相良病院、浦添総合病院)

【原著】

Lancet Oncol 2021; 22: 74–84  [PubMed: 33387497]

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【添付文書における表記】

StageⅠ~ⅢBのエストロゲン受容体陽性かつHER2陰性で再発高リスク注1)の乳癌の術後患者注2)を対象に、TS-1と内分泌療法の併用群(979例)と内分泌療法単独群(980例)の有効性及び安全性を比較する無作為化非盲検比較試験を実施した。用法・用量はクレアチニンクリアランス及び体表面積に応じて、TS-1(FT60~120mg相当量/日)を1日2回、14日間連日経口投与後7日間休薬し、これを繰り返すこととされた。内分泌療法は、試験責任医師の選択する標準的な内分泌療法剤注3)を投与することとされた。いずれも再発又は投与中止基準に該当するまで、TS-1は最長1年間、内分泌療法は最長5年間継続することとされた。主要評価項目である浸潤性疾患のない生存期間のハザード比は0.61(95%信頼区間:0.47~0.80、ログランク検定 p=0.0002)であった。(2018年11月1日データカットオフ)注4)

TS-1と内分泌療法の併用群の安全性解析対象とされた954例において、有害事象発現率は99.0%(944例)であった。主な有害事象は、白血球減少54.4%、色素沈着50.3%、ALT上昇42.9%、好中球減少42.0%、血中ビリルビン増加40.8%、疲労39.1%、AST上昇8.6%、貧血34.9%、悪心34.5%、下痢32.3%、血小板減少32.2%であった。

注1)再発高リスクとして、以下の①又は②の患者と定義された。

①腋窩リンパ節転移が陽性の患者(術前又は術後薬物療法を実施している患者では、薬物療法実施前に腋窩リンパ節転移が陽性の患者)。

②腋窩リンパ節転移が陰性で下記の1)~3)のいずれかに該当する患者。

1)術前薬物療法歴がない場合:手術検体において(ⅰ)浸潤径3cm以上、(ⅱ)組織学的グレード(HG)3、(ⅲ)明らかな脈管侵襲が認められる、(ⅳ)HG2かつ浸潤径2cm以上3cm未満、(ⅴ)HG2、浸潤径2cm未満かつ増殖マーカー高値、又は(ⅵ)HG1、浸潤径2cm以上3cm未満かつ増殖マーカー高値

2)術前化学療法歴がある場合:原発巣又は腋窩リンパ節の手術検体において浸潤癌の残存が認められる。

3)術前内分泌療法歴がある場合:手術検体において(ⅰ)浸潤径3cm以上、(ⅱ)HG3、(ⅲ)明らかな脈管侵襲が認められる、(ⅳ)HG2かつ浸潤径2cm以上3cm未満、(ⅴ)HG2、浸潤径2cm未満かつ増殖マーカー高値又は(ⅵ)HG1、浸潤径2cm以上3cm未満かつ増殖マーカー高値

※:中央病理判定によるKi-67 labeling index 30%以上、又はKi-67 labeling index 14%以上 30%未満の場合はOncotype DX の測定が実施され、recurrence score(RS)18以上の場合に適格とされた。

注2)術後放射線療法が行われている場合には、登録の2週間以上前に終了していることとされ、本剤と放射線療法との同時併用及び本剤投与終了後の放射線療法は行わないこととされた。

注3)以下のいずれかから選択された。なお、術前内分泌療法歴がある場合には、術前と術後内分泌療法の投与期間として合計5年間投与することとされた。

  • 閉経前の場合:タモキシフェン又はトレミフェン。ゴセレリン又はリュープロレリン2年間との併用も可とされた。
  • 閉経後の場合:アナストロゾール、レトロゾール又はエキセメスタン。アロマターゼ阻害剤が不適格の場合には、タモキシフェン又はトレミフェンも可とされた。

注4)有効性の解析対象の症例数はTS-1と内分泌療法の併用群で952例、内分泌療法単独群で967例であった。