CRYSTAL(JCO)
遠隔転移を有する大腸がんと診断された人が初めての治療を考える場合、KRASエクソン2野生型かつ他のRAS野生型であった人では「FOLFIRI」治療に「アービタックス」の上乗せを選択することで無増悪生存期間、生存期間の延長が期待できる。
KRASエクソン2野生型であっても、他のRAS変異を有する人では、「アービタックス」の上乗せは選択しても効果は期待しにくい。本試験では、KRASエクソン2野生型で他のRAS変異が評価可能であった430名のうち、他のRAS変異を有する人が63名(14.7%)いた。63名の内訳は、KRASエクソン4変異型(5.6%)、NRASエクソン2変異型(3.5%)、KRASエクソン3変異型(3.3%)、NRASエクソン3変異型(2.8%)、NRASエクソン4変異型(0.9%)であった。
「アービタックス」の上乗せを選択する場合は、KRASエクソン2だけでなく、他のRAS遺伝子変異の状態を測定、他のRAS変異がないことの確認が「FOLFIRI+アービタックス」治療を選択する精度を高めることができる。
KRAS遺伝子変異は大腸がんの45-50%に認められ、そのうち約90%がKRASエクソン2(コドン12/13)領域に認められる変異である。
【発表】
2015年1月20日
【試験名】
CRYSTAL(Phase 3)〔NCT00154102〕
【試験参加国】
アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブラジル、ブルガリア、チリ、チェコ、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシア、香港、ハンガリー、イタリア、韓国、メキシコ、オランダ、ポーランド、ルーマニア、ロシア、シンガポール、スロバキア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、台湾、トルコ、ウクライナ、英国
【原著】
J Clin Oncol. 2015 ;33:692-700. [PubMed: 25605843]
【さらに詳しく】
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【添付文書における表記】
化学療法の前治療歴のないEGFR発現が確認された結腸・直腸癌患者を対象とした本剤と5-FU・ホリナートカルシウム・イリノテカン塩酸塩水和物療法(FOLFIRI)併用注1) 及びFOLFIRIを比較した第III相試験の成績は次のとおりである。また、レトロスペクティブにKRAS遺伝子変異注2) の有無によって層別した成績は次のとおりである(評価可能例:1063例) 。
対象
全症例
(1198例)KRAS野生型
(666例)KRAS変異型
(397例)本剤及び
FOLFIRI併用
(599例)FOLFIRI
(599例)本剤及び
FOLFIRI併用
(316例)FOLFIRI
(350例)本剤及び
FOLFIRI併用
(214例)FOLFIRI
(183例)無増悪
生存期間中央値
(95%信頼区間)8.9ヵ月
(8.0, 9.5)8.0ヵ月
(7.6, 9.0)9.9ヵ月
(9.0, 11.3)8.4ヵ月
(7.4, 9.2)7.4ヵ月
(6.1, 8.0)7.7ヵ月
(7.3, 9.2)ハザード比
(95%信頼区間)0.851
(0.726, 0.998)0.696
(0.558, 0.867)1.171
(0.887, 1.544)P値
0.0479
0.0012
0.2648
生存期間中央値
(95%信頼区間)19.9ヵ月
(18.5, 21.3)18.6ヵ月
(16.6, 19.8)23.5ヵ月
(21.2, 26.3)20.0ヵ月
(17.4, 21.7)16.2ヵ月
(14.9, 17.9)16.7ヵ月
(14.9, 19.4)ハザード比
(95%信頼区間)0.878
(0.774, 0.995)0.796
(0.670, 0.946)1.035
(0.834, 1.284)P値
0.0419
0.0093
0.7549
注1) FOLFIRIは以下のスケジュールで投与
イリノテカン塩酸塩水和物を180mg/m2、5-FUを400mg/m2(急速静脈内投与法)、2400mg/m2(46時間持続静脈内投与法)及びレボホリナートカルシウム200mg/m2又はホリナートカルシウム400mg/m2を2週間間隔で投与する。注2) KRAS遺伝子コドン12及び13が検討された。
レトロスペクティブにRAS(KRAS又はNRAS)遺伝子変異注3) の有無によって層別した成績は次のとおりである(評価可能例:827例)。
対象
RAS野生型
(367例)RAS変異型
(460例)本剤及び
FOLFIRI併用
(178例)FOLFIRI
(189例)本剤及び
FOLFIRI併用
(246例)FOLFIRI
(214例)無増悪
生存期間中央値
(95%信頼区間)11.4ヵ月
(10.0, 14.6)8.4ヵ月
(7.4, 9.4)7.4ヵ月
(6.4, 8.0)7.5ヵ月
(7.2, 8.5)ハザード比
(95%信頼区間)0.56
(0.41, 0.76)1.10
(0.85, 1.42)P値
0.0002
0.4696
生存期間中央値
(95%信頼区間)28.4ヵ月
(24.7, 31.6)20.2ヵ月
(17.0, 24.5)16.4ヵ月
(14.9, 18.4)17.7ヵ月
(15.4, 19.6)ハザード比
(95%信頼区間)0.69
(0.54, 0.88)1.05
(0.86, 1.28)P値
0.0024
0.6355
注3) KRAS遺伝子コドン12、13、59、61、117、146及びNRAS遺伝子コドン12、13、59、61、117、146の変異が検討された。安全性評価症例600例中、主な副作用(30%以上に発現)は、下痢、悪心、好中球減少症、脱毛症、嘔吐及び発疹であった。