HER2CLIMB-04(Clin Breast Cancer)
HER2陽性局所進行または転移性乳がんと診断され、ハーセプチン、タキサンを含む治療を受けたことがある70名が「ツカイザ+エンハーツ」治療を受けた結果、51.4%の人が治療に奏効し、11.9ヵ月奏効が持続した。
全体集団における「エンハーツ」単剤試験との比較
過去のDESTINY Breast01/02/03試験における「エンハーツ」単剤の奏効率は60.9%〜79.7%、無増悪生存期間(中央値)は16.4〜29.0ヵ月、生存期間(中央値)は29.1〜42.6ヵ月であった。本試験における「ツカイザ」の追加は、これらの「エンハーツ」単剤の既存データと比較して明確な上乗せ効果を示しなかった。これについては、本試験の対象者に「HER2 IHC 3+の割合が少なかったこと(58.6%)」や「脳転移例が多く含まれていたこと」が影響している可能性が考察されている。
脳転移を有する患者での比較
過去の試験で脳転移を有する患者の無増悪生存期間(中央値)は、「エンハーツ」単独(DESTINY Breast-02/03/12試験)で13.9〜17.3ヵ月、「ツカイザ+カドサイラ」等の併用(HER2CLIMB試験)で7.6ヵ月(生存期間 21.6ヵ月)であった。本試験の脳転移サブグループにおける「無増悪生存期間(中央値) 20.0ヵ月」「生存期間(中央値) 35.5ヵ月」という結果は、この治療困難な集団において非常に有望な臨床活性を示していると対比されている。
本試験は抗HER2抗体薬物複合体である「エンハーツ」に、HER2選択的TKIである「ツカイザ」を上乗せする「細胞内外の二重標的化」アプローチを前向きに評価している。特に、この強力な組み合わせの課題であった重度の「下痢」に対して、ロペラミドの予防投与の導によって、薬剤の減量や中止を大幅に減らし、忍容可能なレベルまで毒性を管理できることを示した。
本試験では「エンハーツ」単独と比較して明確な上乗せ効果が示されなかったため、直ちに実臨床における標準治療を変更されるものではない。しかし、脳転移を有する患者に対する有望な無増悪生存期間および生存期間のデータと、下痢予防薬の併用による安全性・治療完遂率向上の知見は、今後、極めて予後不良な「脳転移を有するHER2陽性乳がん」に対して抗体薬物複合体とチロシンキナーゼ阻害薬の併用戦略を検討・最適化していく上での重要な基盤データといえる。
【発表】
2026年7月10日
【試験名】
HER2CLIMB-04(Phase 2)〔NCT04539938〕
【試験参加国】
米国
【原著】
Clin Breast Cancer. 2026 ;26:21-30. [PubMed: 42431148]