Ⅳ期非小細胞肺がんは、現時点で「がんゲノム医療」が最も進んだ「がん」であり、この10年間で治療が最も大きく進歩した。
ここでは無作為化比較試験の結果を中心に紹介している。上段の横棒グラフは現在の標準治療の無増悪生存期間であり、下段はかつての標準治療のものである。現在の標準治療は、2014年以降に確立されたものであり、10年前の治療は、EGFR遺伝子変異/転座陽性に対する「イレッサ」治療、「タルセバ」治療、ALK融合遺伝子に対する「ザーコリ」治療を除いて、プラチナ製剤をベースとした化学療法であった。これらの治療による無増悪生存期間はドライバー遺伝子変異/転座陽性において10〜11ヵ月、ドライバー遺伝子変異/転座陰性においては4〜6ヵ月ほどであった。
1. ドライバー遺伝子変異/転座陽性非小細胞肺がんの一次治療
2014年以降、ドライバー遺伝子変異/転座陽性に対する治療は、EGFR遺伝子変異に対する「タグリッソ」や、ALK融合遺伝子に対する「アレセンサ」のような、より長い無増悪生存期間が期待できる治療薬が承認された。さらに現在では「タグリッソ+化学療法」、「ローブレナ(5年無増悪生存率:60%、無増悪生存期間中央値:未到達)」のような高い効果が期待できるレジメンも選択できるようになった。
1-1. EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんの一次治療
1-1-1. エクソン19欠失またはL858R変異陽性
1. 「タグリッソ」単剤治療 EGFR遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R変異)陽性のⅣ期非小細胞肺がんに対して、PS0-1の場合、「タグリッソ単剤治療」のみが強く推奨されている。 「タグリッソ」単剤治療に不応・不耐となった場合の二次治療 PS2の場合、「EGFR-TKI ...
1-1-2. エクソン20挿入変異
1. 「ライブリバント+カルボプラチン+ペメトレキセド」併用療法 EGFRエクソン20挿入変異陽性のⅣ期非小細胞肺がんに対して、「ライブリバント+カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法」が強く推奨されている。 2. EGFR-TKI単剤治療 EGFRエクソン20挿入変異陽性のⅣ期 ...
1-1-3. エクソン19欠失・L858R変異・エクソン20挿入変異を除く
1. 「ジオトリフ」単剤治療 EGFRエクソン18-21の遺伝子変異(E709X、G719X、S768I、P848L、L861Q、エクソン19の挿入変異など)陽性のⅣ期非小細胞肺がんに対して、「ジオトリフ単剤治療」が強く推奨されている。 「ジオトリフ」単剤治療に不応・不耐となった ...
1-2. ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がんの一次治療
ALK融合遺伝子陽性のⅣ期非小細胞肺がんに対して、PS0-1の場合、「アレセンサ単剤治療」、「ローブレナ単剤治療」が強く推奨されており、「アルンブリグ単剤治療」、が弱く推奨されている。PS2-4の場合、「アレセンサ単剤治療」が強く推奨されている。 「アレセンサ」単剤治療に不応・不 ...
1-3. その他のドライバー遺伝子陽性非小細胞肺がんの一次治療
EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子だけでなく、新たにBRAF遺伝子変異、ROS1融合遺伝子、MET遺伝子変異、RET融合遺伝子に対する一次治療も承認された。これらの治療による無増悪生存期間は、ドライバー遺伝子変異/転座陰性の標準治療である「抗PD-(L)1抗体+化学療法」のものより長い。
1-3-1. BRAF遺伝子V600E変異陽性
BRAF遺伝子V600E変異陽性のⅣ期非小細胞肺がんに対して、「タフィンラー+メキニスト併用療法」を行うよう強く推奨されている。 『レジメン図鑑』でもう少し詳しく見る ...
1-3-2. ROS1融合遺伝子陽性
ROS1融合遺伝子陽性のⅣ期非小細胞肺がんに対して、「ザーコリ単剤治療」、「ロズリートレク単剤治療」、「オータイロ単剤治療」のいずれかを行うよう推奨されている。 ...
1-3-3. MET遺伝子変異陽性
MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性のⅣ期非小細胞肺がんに対して、「テプミトコ単剤治療」、「タブレクタ単剤治療」、「ハイイータン単剤治療」のいずれかを行うよう推奨されている。 1. テプミトコ単剤治療 2. タブレクタ単剤治療 3. ハイイータン単剤治療 ...
1-3-4. RET融合遺伝子陽性
RET融合遺伝子陽性のⅣ期非小細胞肺がんに対して、「レットヴィモ単剤治療」を行うよう強く推奨されている。 ...
2. ドライバー遺伝子変異/転座陰性非小細胞肺がんの一次治療
2016年以降、抗PD-(L)1抗体の登場により、ドライバー遺伝子変異/転座陰性の治療は一変し、無増悪生存期間、生存期間は延長したが、それでもドライバー遺伝子変異/転座陽性に対する分子標的薬治療に比べると、まだまだ改善の余地が大きい。
2-1. PD-L1 TPS 50%以上の非小細胞肺がん
1. キイトルーダ単剤治療/テセントリク単剤治療 PD-L1 TPS 50%以上のⅣ期非小細胞肺がんに対して、PS0-1の場合、「キイトルーダ単剤治療」、「テセントリク単剤治療」が強く推奨されている。PS2の場合、「キイトルーダ単剤治療」、「テセントリク単剤治療」が弱く推奨されて ...
2-2. PD-L1 TPS 1〜49%の非小細胞肺がん
1. PD-1/PD-L1阻害薬+プラチナ製剤併用療法 PD-L1 TPS 1〜49%のⅣ期非小細胞肺がんに対して、PS0-1の場合、「PD-1/PD-L1阻害薬+プラチナ製剤併用療法」が強く推奨されている。PS2の場合、行うよう推奨するだけの根拠が明確でない治療とされている。 ...
2-3. PD-L1 TPS 1%未満の非小細胞肺がん
1. PD-1/PD-L1阻害薬+プラチナ製剤併用療法 PD-L1 TPS 1%未満のⅣ期非小細胞肺がんに対して、PS0-1の場合、「PD-1/PD-L1阻害薬+プラチナ製剤併用療法」が強く推奨されている。PS2の場合、行うよう推奨するだけの根拠が明確でない治療とされている。 扁 ...
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