【肝細胞がん:一次治療(OS)】「SIRT」vs「ネクサバール」

SIRveNIB(JCO)                         

切除不能な局所進行または転移性肝細胞がんと診断された人が治療を考える場合、「選択的内部照射(SIRT)」を選択しても、「ネクサバール」治療を選択した場合を上回る生存期間は期待しにくい。

ネクサバール」治療を受けた人の84.6%が治療関連有害事象を経験したのに対し、「SIRT」治療を受けた人では60.0%であった。「ネクサバール」治療では、脱毛、手足症候群、発疹などの皮膚症状、下痢、便秘などの消化器症状が高頻度であった。

グレード3以上の治療関連有害事象を経験した人は、「ネクサバール」治療を受けた人では50.6%であったのに対し、「SIRT」治療を受けた人では27.7%であった。

【発表】

2018年3月2日

【試験名】

SIRveNIB(Phase 3)〔NCT01135056

【試験参加国】

韓国、中国、台湾、モンゴル、フィリピン、タイ、ミャンマー、シンガポール、インドネシア、ブルネイ、マレーシア、ニュージーランド

【原著】

J Clin Oncol. 2018 ;36:1913-21. [PubMed: 29498924]

【さらに詳しく】

 

本試験について古瀬純司氏(杏林大学医学部腫瘍内科学教室)は、日経メディカル エリアレビュー(ASCO 2017 肝癌)の中で次のように述べている。

またASCO2017では、局所進行肝細胞癌のアジア人患者を対象として、選択的内部放射線療法(selective internal radiation therapy:SIRT)を評価した第III相のSIRveNIB試験の結果も発表されました。SIRTには、イットリウム-90(90Y)で標識したマイクロスフィアが用いられています(Pierce H.W. Chow, et al. ASCO2017 Abstract No.4002)。

主要評価項目であるOSは、ITT解析対象および実際に治療を受けた患者のどちらにおいても、SIRTはソラフェニブと比べて有意な延長を示すことができませんでした。

ただし、治療を受けた患者では、無増悪期間(TTP)および肝臓内のTTP、PFSおよび肝臓内のPFSは、いずれもSIRTで有意に改善したと報告されています。

肝細胞癌は肝臓内で進行し、肝不全に移行しますから、この試験では、肝臓内の進行を抑える効果があることを強調したかったのではないかと思います。

治療が普及するためには、効果に加え、less toxic、利便性、コストなど、さまざまな要素を考える必要があります。その治療を行った人が「良い」と言っても、世の中の第三者が客観的に評価し、導入する意義があるかどうかを判断する必要があり、そのために第III試験があります。残念ながら、この試験は主要評価項目を達成することができませんでした。また、核医学はメンテナンスも大変ですから、有用性、優越性が示されないと普及は難しいと思います。