DESTINY-Gastric01(NEJM)
ハーセプチンを含む2つ以上の治療中に進行したHER2陽性の人が次の治療を考える場合、「エンハーツ」治療を選択することで、化学療法(89%がイリノテカン、11%がパクリタキセル)を選択した場合に比べ、奏効率の向上、生存期間の延長が期待できる。
主なグレード3以上の有害事象は、好中球数減少症、貧血、白血球減少症であり、「エンハーツ」治療を受けた人の51%、38%、21%が好中球数減少症(vs 24%)、貧血(vs 23%)、白血球減少症(vs 11%)を経験した。
「エンハーツ」治療を受けた125人のうち、11人が間質性肺炎を経験した(グレード1または2が9人、グレード3または4が3人)。
本試験および日米共同フェーズ1試験(DS8201-A-J101)の結果を受けて、2020年5月7日に承認申請され、同年9月25日、「エンハーツ」が「がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌」を効能・効果として承認された。
【発表】
2020年5月29日
DESTINY-Gastric01(Phase 2)〔NCT03329690/jRCT2080223671〕
【試験実施・参加国】
日本(愛知県がんセンター、弘前大学医学部附属病院、国立がん研究センター東病院、四国がんセンター、JCHO九州病院、群馬県立がんセンター、呉医療センター中国がんセンター、北海道大学病院、兵庫県立がんセンター、関西ろうさい病院、神戸市立医療センター中央市民病院、茨城県立中央病院、金沢大学附属病院、岩手医科大学附属病院、香川大学医学部附属病院、聖マリアンナ医科大学病院、北里大学病院、横浜市立大学附属市民総合医療センター、神奈川県立がんセンター、日本赤十字社 京都第二赤十字病院、宮城県立がんセンター、日本赤十字社 京都第二赤十字病院、大阪大学医学部附属病院、市立豊中病院、栃木県立がんセンター、都立駒込病院、国立がん研究センター中央病院、がん研有明病院、昭和大学江東豊洲病院、虎の門病院、千葉県がんセンター、福井県立病院、九州がんセンター、九州大学病院、岐阜大学医学部附属病院、広島市立北部医療センター安佐市民病院、県立広島病院、高知医療センター、新潟県立がんセンター新潟病院、岡山大学病院、大阪市立総合医療センター、大阪国際がんセンター、大阪急性期・総合医療センター)、韓国
【原著】
N Engl J Med 2020; 382:2419-2430. [PubMed: 32469182]
【さらに詳しく】
- 治療歴のある HER2 陽性胃癌に対するトラスツズマブ デルクステカン〔NEJM日本語アブストラクト〕
- トラスツズマブ デルクステカン、既治療HER2+胃がんのOS改善/NEJM〔ケアネット〕
- 進行胃がんに対する薬物療法が大きく変わる―免疫チェックポイント阻害薬と抗体薬物複合体(解説:上村 直実 氏)〔ケアネット〕
- HER2+胃・胃食道接合部腺がん患者におけるトラスツズマブ デルクステカン(DESTINY-Gastric01)/ASCO2020〔ケアネット〕
- トラスツズマブ デルクステカンがHER2陽性の既治療進行胃癌の奏効率と全生存期間を有意に改善【ASCO2020】〔日経メディカル〕
- トラスツズマブ デルクステカンがHER2過剰発現の再発・進行胃癌の奏効率と全生存期間を有意に改善〔日経メディカル〕
- 既治療HER2陽性胃がん 抗体薬物複合体が奏効 第Ⅱ相試験DESTINY-Gastric01〔Medical Tribune〕
- 第一三共 抗HER2抗体薬物複合体「DS-8201」 胃がん適応で20年4~6月に国内申請へ〔ミクスOnline〕
- 第一三共のDS-8201、胃がんP2で主要項目達成 20年度中に国内申請へ〔日刊薬業〕
【こちらの図鑑も合わせて見る】
【添付文書における表記】
トラスツズマブ、白金系抗悪性腫瘍剤、及びフッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤を含む2レジメン以上の治療で増悪が認められたHER2陽性注10)の治癒切除不能な進行・再発の胃腺癌又は胃食道接合部腺癌患者を対象として、本剤と治験担当医師が選択した治療(イリノテカン塩酸塩水和物又はパクリタキセル)を比較する非盲検無作為化試験を実施した。本剤群では本剤6.4mg/kgを3週間間隔で点滴静注した。被験者187例(日本人149例を含む。本剤群125例、医師選択治療群62例)のうち、独立効果判定機関により標的病変が特定された被験者175例(日本人140例を含む。本剤群119例、医師選択治療群56例)において、主要評価項目である独立効果判定機関での評価に基づく奏効率[95%信頼区間]は、本剤群で51.3[41.9~60.5]%、医師選択治療群で14.3[6.4~26.2]%であり、本剤群で統計学的に有意に高い奏効率を示した(P<0.0001、Cochran-Mantel-Haenszel検定)。また、奏効率に続き、階層的な検定手順により仮説検定が実施された副次評価項目の一つである全生存期間の中間解析でも、本剤は治験担当医師が選択した治療に対し、統計学的に有意な延長を示した(中央値:本剤群12.5ヵ月、医師選択治療群8.4ヵ月、ハザード比[95%信頼区間]:0.59[0.39~0.88]、層別ログランク検定:P=0.0097、有意水準[両側]=0.0202)。
本剤群125例(日本人99例を含む)において、副作用が122例(97.6%)に認められた。主な副作用は、好中球数減少78例(62.4%)、悪心72例(57.6%)、食欲減退66例(52.8%)、貧血51例(40.8%)、血小板数減少48例(38.4%)、白血球数減少47例(37.6%)、倦怠感43例(34.4%)、下痢31例(24.8%)、脱毛症28例(22.4%)、リンパ球数減少27例(21.6%)、嘔吐26例(20.8%)等であった。また、日本人集団において、間質性肺疾患は99例中11例(11.1%)に認められた。
注10) IHC法3+、又はIHC法2+かつISH法陽性の患者が組み入れられた。