EMBRACA(NEJM)
BRCA遺伝子陽性乳がんと診断され、2ライン以下の化学療法歴がある女性が次の治療を考える場合、PARP阻害薬「ターゼナ」治療を選択することで無増悪生存期間の延長が期待できる。
試験では、主治医によって選択された標準治療(カペシタビン、ビノレルビン 、ハラヴェン、ゲムシタビン)を受けた人の無増悪生存期間が5.6ヵ月であったのに対し、「ターゼナ」治療を受けた人は8.6ヵ月と有意に延長(p<0.001)。
成熟データではないものの、生存期間には治療間に差は認められなかった(p=0.11)。
奏効率は、標準治療を受けた人で27.7%であったのに対し、「ターゼナ」治療を受けた人は62.6%と有意に向上。
グレード3以上の血液毒性は、標準治療を受けた人の38%に発現したのに対し、「ターゼナ」治療を受けた人では55%であった。グレード3以上の非血液毒性は、標準治療を受けた人の38%に発現したのに対し、「ターゼナ」治療を受けた人では32%であった。
本試験の結果に基づいて、2023年2月24日、「ターゼナ」が「BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳癌」を予定適応症として承認申請され、2024年1月18日、「がん化学療法歴のあるBRCA 遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」を効能及び効果とし、承認された。
【発表】
2018年8月15日
【試験名】
EMBRACA(Phase 3)〔NCT01945775〕
【試験参加国】
米国、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、フランス、ドイツ、アイルランド、イスラエル、イタリア、韓国、ポーランド、ロシア、スペイン、台湾、ウクライナ、英国
【原著】
N Engl J Med 2018;379:753-63. [PubMed: 30110579]
【さらに詳しく】
- 生殖細胞系列 BRCA 変異陽性の進行乳癌患者におけるタラゾパリブ〔NEJM日本語アブストラクト〕
- BRCA変異乳がんに対するtalazoparibの第III相試験〔ケアネット〕
- BRCA変異乳がんにおいてPARP阻害薬talazoparibはPFSを延長する−EMBRACA試験(解説:矢形 寛 氏)〔ケアネット〕
- TalazoparibがBRCA変異乳がんの無増悪生存期間を延長〔海外がん医療情報リファレンス〕
- BRCA1/2陽性進行乳がんに有効な新規PARP阻害薬〔Medical Tribune〕
【こちらの図鑑も合わせて見る】
【添付文書における表記】
生殖細胞系列のBRCA遺伝子変異(病的変異又は病的変異疑い)陽性かつHER2陰性であり、アントラサイクリン系抗悪性腫瘍剤又はタキサン系抗悪性腫瘍剤(禁忌でない場合)による治療歴を有する手術不能又は再発乳癌患者431例を対象に、タラゾパリブと医師が選択した化学療法(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン又はビノレルビンのいずれかを選択)の有効性を検討することを目的とした、無作為化、非盲検、並行群間、海外第Ⅲ相試験を実施した。タラゾパリブは、開始用量として1mgを1日1回連続経口投与した。
主要評価項目である盲検下独立中央評価による無増悪生存期間の中央値は、タラゾパリブ群で8.6ヵ月、化学療法群で5.6ヵ月であり、ハザード比は0.542(95%信頼区間:0.413、0.711;両側層別ログランク検定p<0.0001)で、タラゾパリブ群で統計学的に有意な無増悪生存期間の延長が認められた。
タラゾパリブが投与された286例中256例(89.5%)に副作用が認められた。主な副作用は貧血(49.3%)、疲労(39.5%)、悪心(36.7%)、好中球減少症(25.5%)、脱毛症(24.8%)等であった(2021年3月5日カットオフ時点の集計)。