【Rising Star 2024】がん治療の進歩:2024年の見通し

2023年、新しいがん治療レジメンの承認申請、Phase3試験結果の論文発表/学会発表/企業プレスリリースが数多く行われた。これらレジメンは、2024年内あるいは遠くない将来、日本において選択できる可能性が高い。ここでは近い将来、選択が可能になりそうながん治療についてまとめてみた。

1. 肺がん2. 乳がん3. 食道がん・胃がん4. 大腸がん5. 肝細胞がん6. 胆道がん7. 腎細胞がん8. 前立腺がん9. 尿路上皮がん10. 卵巣がん11. 子宮頸がん12. 子宮体がん

1. 肺がん

2023年10月に開催された欧州臨床腫瘍学会(以下、ESMO 2023)では、数多くのエポックメイキングな臨床成績が発表された。この結果を受けて、論文発表、承認申請、承認など、2024年はさらに肺がん治療の進歩が見込まれている。また、現在進行中の臨床試験のいくつかの結果が発表される予定である。
まず、2024年は、術前に免疫チェックポイント阻害薬を化学療法を上乗せし術後にも免疫チェックポイント阻害薬療法を行う「サンドイッチ型の周術期治療」の臨床応用が話題になりそうだ。
2023年9月7日、Phase 3試験『KEYNOTE-671』の結果(2023年6月3日、NEJM誌に発表)に基づいて、「キイトルーダ」について、切除可能な非小細胞肺がんに対する術前の化学療法との併用療法と、それに続く術後のキイトルーダ単独療法として、承認申請された。2024年内の承認が期待されている。
【近未来のレジメン図鑑】キイトルーダ+シスプラチン+ゲムシタビン(肺がん:周術期治療)
「キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)」について、切除可能な非小細胞肺がんに対する術前の化学療法との併用療法と、それに続く術後のキイトルーダ単独療法として、2023年9月7日に承認申請された。この申請は、Phase 3試験『KEYNOTE-671』の結果に基づく。 【承認申請 ...
【近未来のレジメン図鑑】キイトルーダ+シスプラチン+ペメトレキセド(肺がん:周術期治療)
「キイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)」について、切除可能な非小細胞肺がんに対する術前の化学療法との併用療法と、それに続く術後のキイトルーダ単独療法として、2023年9月7日に承認申請された。この申請は、Phase 3試験『KEYNOTE-671』の結果に基づく。 【承認申請 ...

 

2023年10月23日、Phase 3試験『AEGEAN』の結果がNEJM誌に発表された。『AEGEAN』試験では「イミフィンジ」について、切除可能な期非小細胞肺がんに対する「術前のイミフィンジ+化学療法および術後補助療法としてイミフィンジ」によって1年無イベント生存率の改善された。『AEGEAN』試験には日本も参加しており、2024年は、国内における「イミフィンジ」の適応拡大に関する動向が注目される。

【ⅡA-ⅢB期肺がん:周術期治療(EFS)】「イミフィンジ+化学療法→手術→イミフィンジ」vs「化学療法→手術」
AEGEAN(NEJM)                          切除可能なIIA期-IIIB期非小細胞肺がんと診断された人が手術前後の治療を考える場合、「術前の化学療法」に「イミフィンジ」の上乗せおよび「術後のイミフィンジ(4週毎に最長12サイクル)」の追加を選択する ...

 

2023年10月には、ESMO 2023にて、Phase 3試験『CheckMate 77T』の結果として、切除可能な期非小細胞肺がんに対する「術前のオプジーボ+化学療法および術後補助療法としてオプジーボ」によって1年無イベント生存率の改善が得られたことが発表された。小野薬品の発表によると、2024年3月までに承認申請を予定されている。

【II-IIIB期肺がん:周術期治療(EFS)】「オプジーボ+化学療法→手術→オプジーボ」vs「化学療法→手術」
CheckMate 77T                            切除可能なII期-IIIB期非小細胞肺がんと診断された人が手術を受ける場合、「術前の化学療法」への「オプジーボ」の上乗せ、および「術後補助療法としてオプジーボの実施」を選択することで1年無イベント生 ...

 

2023年12月15日、Phase 3試験『ALINA』の結果に基づいて、「アレセンサ」単剤治療が「ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんにおける術後補助療法」に対し、承認申請された。2024年内の承認が期待されている。

【近未来のレジメン図鑑】アレセンサ(ALK陽性肺がん:術後治療)
「アレセンサ(一般名=アレクチニブ塩酸塩)」は、2014年7月4日、「ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」に対して承認されたALK阻害薬。「ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんにおける術後補助療法」に対しては、2023年12月15日、承認申請された。この申 ...

 

小野薬品の発表によると、Phase 3試験『CheckMate 73L』の結果に基づき、2025年3月までに承認申請する予定とのこと。『CheckMate 73L』試験では、切除不能なⅢ期非小細胞肺がん対する化学放射線療法後の維持療法として「オプジーボヤーボイ」治療が無増悪生存期間において「イミフィンジ」治療を上回るかについて検証している。

【Ⅲ期肺がん:維持療法(PFS)】「オプジーボ+ヤーボイ」vs「イミフィンジ」
CheckMate 73L                            切除不能なⅢ期非小細胞肺がんと診断され、化学放射線療法後に病勢の進行が認められなかった人が維持療法を考える場合、「オプジーボ+ヤーボイ」治療を選択することで、「イミフィンジ」治療を選択した場合を上回 ...

 

中外製薬の発表によると、Phase 3試験『SKYSCRAPER-01』のトップラインデータが2024年3月までに入手、12月までに承認申請予定とのこと。『SKYSCRAPER-01』試験では、PD-L1高発現の進行非小細胞肺がんに対する「テセントリク+抗TIGIT抗体チラゴルマブ」治療が生存期間において「テセントリク」治療を上回るかについて検証している。

【PD-L1強陽性肺がん:一次治療(OS、PFS)】「テセントリク+チラゴルマブ」vs「テセントリク」
SKYSCRAPER-01                          PD-L1高発現の局所進行切除不能または転移性の非小細胞肺がんと診断された人が初めての治療を考える場合、「テセントリク」治療に「抗TIGIT抗体チラゴルマブ」の上乗せを選択することで生存期間が延長できる ...

 

ESMO 2023では、Phase 3試験『TROPION-LUNG01』の結果として、既治療の進行非小細胞肺がんに対する「抗TROP2抗体薬物複合体ダトポタマブ デルクステカン」治療が、生存期間において「ドセタキセル」単剤治療を上回ったことが発表された。『TROPION-LUNG01』試験には日本も参加しており、本年も、論文発表、国内での動向が注目される。

【肺がん:二次治療(OS、PFS)】「ダトポタマブ デルクステカン」vs「ドセタキセル」
TROPION-LUNG01                         進行または転移性の非小細胞肺がんと診断され、何らかの治療中に病勢が進行した人が次の治療を考える場合、「ダトポタマブ デルクステカン」治療を選択することで「ドセタキセル」治療を選択した場合を上回る無増悪生 ...

 

2023年11月、Phase3試験『FLAURA2』の結果がNEJM誌に発表された。EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がんに対する「タグリッソ+化学療法」併用療法が、無増悪生存期間において「タグリッソ」単剤治療を上回った。本試験の結果に基づき、米国では適応追加申請が行われている。『FLAURA2』試験には日本も参加しており、2024年は、国内における「タグリッソ」の適応拡大に関する動向が注目される。

【EGFR陽性肺がん:一次治療(PFS)】「タグリッソ+化学療法」vs「タグリッソ」
FLAURA2(NEJM)                         EGFR遺伝子変異陽性の局所進行または転移性の非小細胞肺がんと診断された人が初めての治療を考える場合、「タグリッソ」治療に「ペメトレキセド+プラチナ製剤」の上乗せを選択することで、無増悪生存期間の延長が期 ...

 

2023年11月17日、Phase 3試験『PAPILLON』の結果に基づいて、「EGFR/MET二重特異性抗体 アミバンタマブ」が、化学療法との併用療法として「EGFRエクソン20挿入変異陽性の非小細胞肺がん」を対象に承認申請された。2024年内の承認が期待されている。

【近未来のレジメン図鑑】アミバンタマブ+カルボプラチン +ペメトレキセド(EGFR Exon 20陽性肺がん)
「アミバンタマブ」はEGFRエクソン20挿入変異陽性の非小細胞肺がんに対して、2023年11月17日に承認申請されたEGFR/MET二重特異性抗体。この申請は、Phase 3試験『PAPILLON試験』の結果に基づく。 【承認申請日】 2023年11月17日 【効能及び効果】 R ...

 

ESMO 2023では、Phase 3試験『MARIPOSA』の結果として、EGFR変異陽性の進行非小細胞肺がんに対する「アミバンタマブ+EGFR-TKIラゼルチニブ」併用療法が、無増悪生存期間において「タグリッソ」単剤治療を上回ったことが発表されている。『MARIPOSA』試験には日本も参加しており、本年も、論文発表、国内での動向が注目される。

【EGFR陽性肺がん:一次治療(PFS)】「アミバンタマブ+ラゼルチニブ」vs「タグリッソ」
MARIPOSA                             局所進行または転移性のEGFR変異陽性の非小細胞肺がんと診断された人が初めての治療を考える場合、「EGFR/MET二重特異性抗体アミバンタマブ+EGFR-TKIラゼルチニブ」治療を選択することで「タグリッソ ...

 

2023年10月、Phase3試験『MARIPOSA-2』の結果がESMO 2023およびAnnals of Oncology誌に発表された。「タグリッソ」治療が無効になったEGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がんに対する「アミバンタマブラゼルチニブ+化学療法」併用療法が、無増悪生存期間において化学療法を上回った。『MARIPOSA-2』試験には日本も参加しており、今後、国内での動向が注目される。

【EGFR陽性肺がん:二次治療(PFS)】「アミバンタマブ+ラゼルチニブ+化学療法」vs「化学療法」
MARIPOSA-2(Ann Oncol)                     局所進行または転移性のEGFR変異陽性の非小細胞肺がんと診断され、「タグリッソ」治療が無効になった人が次の治療を考える場合、「ペメトレキセド+カルボプラチン」に「EGFR/MET二重特異性抗体アミ ...

 

EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がんの二次治療としては、「抗HER3抗体薬物複合体 パトリツマブ デルクステカン」治療の成績も2024年内に明らかになる可能性もありそうだ。第一三共の発表によると、Phase 3試験『HERTHENA-Lung02』のトップラインデータが2025年3月までに入手予定とのこと。『HERTHENA-Lung02』試験では、EGFR-TKI阻害薬治療中に病勢が進行したEGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がんに対する「パトリツマブ デルクステカン」治療が無増悪生存期間において「化学療法」を上回るかについて検証している。

【EGFR陽性肺がん:二次治療(PFS)】「パトリツマブ デルクステカン」vs「化学療法」
HERTHENA-Lung02                         EGFR変異陽性の局所進行または転移性の非小細胞肺がんと診断され、EGFR-TKI阻害薬治療中に病勢が進行した人が次の治療を考える場合、「パトリツマブ デルクステカン」治療を選択することで「化学療法」 ...

 

第一三共の発表によると、Phase 3試験『DESTINY-Lung04』のトップラインデータが2025年3月までに入手予定とのこと。『DESTINY-Lung04』試験では、未治療のHER2遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がんに対する「エンハーツ」治療が無増悪生存期間において「キイトルーダ+化学療法」を上回るかについて検証している。

【HER2陽性肺がん:一次治療(PFS)】「エンハーツ」vs「キイトルーダ+化学療法」
DESTINY-Lung04                          HER2エクソン19または20変異陽性の切除不能な局所進行または転移性の非小細胞肺がんと診断された人が初めての治療を考える場合、「エンハーツ」治療を選択することで「キイトルーダ+化学療法(プラチナ製剤 ...

 

2023年10月25日、Phase 1/2試験『TRIDENT-1』の結果に基づいて、「ROS1/TRK/ALKチロシンキナーゼ阻害薬 レポトレクチニブ」が、「ROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん」を対象に承認申請された。2024年1月11日Phase 1/2試験『TRIDENT-1』の結果がNEJM誌に発表された。2024年内の承認が期待されている。

【近未来のレジメン図鑑】レポトレクチニブ(ROS1陽性肺がん)
「レポトレクチニブ」はROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんに対して、2023年10月25日に承認申請されたROS1/TRK/ALKチロシンキナーゼ阻害薬。この申請は、Phase 1/2試験『TRIDENT-1試験』の結果に基づく。 【承認申請日】 2023年10月25日 【効能 ...

 

2023年9月8日、Phase 2試験『GLORY』の結果に基づいて、「MET阻害薬 グマロンチニブ」が「MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を対象に承認申請された。2024年内の承認が期待されている。

【近未来のレジメン図鑑】グマロンチニブ(MET陽性肺がん)
「グマロンチニブ」について、MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対して、2023年9月8日に承認申請された。この申請は、Phase 2試験『GLORY試験』の結果に基づく。 【承認申請日】 2023年9月8日 【効能及び効果】 ME ...

 

2.乳がん

2024年は抗体に薬物を結合させたバイオ医薬品「抗体薬物複合体(Antibody-drug conjugate: ADC)」の臨床応用が本格化する。2020年3月に承認された抗HER2抗体薬物複合体「エンハーツ」はさらに新しい臨床試験成績が発表されており、抗Trop-2抗体薬物複合体は「サシツズマブ ゴビテカン」、「ダトポタマブ デルクステカン」の近々の承認申請も期待されている。

その他、初の「AKT阻害薬 トルカプ」や「PARP阻害薬 ターゼナ」は2024年内の承認が見込まれている。

2023年10月開催のESMO 2023にて、Phase 3試験『KEYNOTE-756』の結果として、ER陽性HER2陰性乳がんの周術期治療として「術前補助化学療法+キイトルーダ」および「術後補助内分泌療法+キイトルーダ」治療が、病理学的完全奏効率を改善させることが証明された。『KEYNOTE-756』試験には日本も参加しており、2024年は、『KEYNOTE-756』試験の論文発表、無病生存期間への影響、国内承認に関する動向が注目される。

【ER陽性乳がん:周術期治療(pCR)】「キイトルーダ+化学療法→手術→キイトルーダ+内分泌療法」vs「化学療法→手術→内分泌療法」
KEYNOTE-756                            ER陽性HER2陰性乳がんと診断され、手術を受けた女性が手術前後の治療を考える場合、「術前補助化学療法(パクリタキセル→ドキソルビシン+シクロホスファミド)」および「術後補助内分泌療法」に「キイトルーダ ...

 

2023年は、抗Trop-2抗体薬物複合体の国内での臨床応用への期待が高まった年でもあった。2023年8月、Phase 3試験『TROPiCS-02』の結果として、内分泌療法歴を有する HR陽性転移性乳がんに対する「抗Trop-2抗体薬物複合体 サシツズマブ ゴビテカン」治療が「化学療法」を上回る生存期間が得られたことがLancet誌に発表された。『TROPiCS-02』試験における無増悪生存期間の延長については2022年にJCO誌に発表されていた。「サシツズマブ ゴビテカン」は本邦でも開発が進行中であり、国内承認が期待されている。

【HR陽性乳がん:三次治療(OS)】「サシツズマブ ゴビテカン」vs「化学療法」
TROPiCS-02(Lancet)                    HR陽性HER2陰性転移性乳がんと診断され、ホルモン療法抵抗性となり、化学療法歴がある女性が、次の治療を考える場合、抗Trop-2抗体薬物複合体「サシツズマブ ゴビテカン」治療を選択することで「化学療法( ...

 

「抗Trop-2抗体薬物複合体 サシツズマブ ゴビテカン」について、2024年1月30日、「全身療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん」を対象に承認申請された。

【近未来のレジメン図鑑】サシツズマブ ゴビテカン(乳がん)
2024年1月30日、抗Trop-2抗体薬物複合体「サシツズマブ ゴビテカン」が「全身療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性かつHER2陰性乳がん」を対象に承認申請された。この申請は、Phase 3試験『ASCENT試験』、国内Phase2試験『ASCENT J-02 ...

 

同じく抗Trop-2抗体薬物複合体として「ダトポタマブ デルクステカン」の開発も進んでいる。Phase3試験『TROPION-Breast01』の結果として、化学療法歴を有する HR陽性転移性乳がんに対する「ダトポタマブ デルクステカン」治療が「化学療法」を上回る無増悪生存期間が得られたことが2023年10月に開催されたESMO 2023にて発表された。『TROPION-Breast01』試験には日本も参加しており、2024年は、『TROPION-Breast01』試験の論文発表、「ダトポタマブ デルクステカン」の国内承認に関する動向が注目される。

【HR陽性乳がん:二次治療(PFS)】「ダトポタマブ デルクステカン」vs「化学療法」
TROPION-Breast01                         切除不能または転移性HR陽性、HER2陰性乳がんと診断された1~2ラインの全身化学療法歴のある女性が次の治療を考える場合、「ダトポタマブ デルクステカン」治療を選択することで、「単剤化学療法(カペシ ...

 

ダトポタマブ デルクステカン」については、Phase 3試験『TROPION-Breast02』のトップラインデータが2025年3月までに入手予定であることを第一三共は発表している。『TROPION-Breast02』試験では、抗PD-(L)1抗体の適応とならない進行トリプルネガティブ乳がんに対する「ダトポタマブ デルクステカン」治療が無増悪生存期間、生存期間において単剤化学療法を上回るかについて検証している。

【トリプルネガティブ乳がん:一次治療(OS、PFS)】「ダトポタマブ デルクステカン」vs「単剤化学療法」
TROPION-Breast02                         抗PD-(L)1抗体の適応とならない局所再発切除不能または転移性トリプルネガティブ乳がんと診断された女性が初めての治療を考える場合、「ダトポタマブ デルクステカン」治療を選択することで、「単剤化学療 ...

 

第一三共の発表によると、Phase 3試験『DESTINY-Breast09』のトップラインデータが2025年3月までに入手予定とのこと。『DESTINY-Breast09』試験では、未治療のHER2陽性乳がんに対する「エンハーツパージェタ」併用療法または「エンハーツ」治療が無増悪生存期間において「ハーセプチンパージェタ+タキサン」を上回るかについて検証している。

【HER2陽性乳がん:一次治療(PFS)】「エンハーツ+パージェタ」vs「ハーセプチン+パージェタ+タキサン」
DESTINY-Breast09                         遠隔転移を有するHER2陽性乳がんと診断された女性が初めての治療を考える場合、「エンハーツ+パージェタ」または「エンハーツ」治療を選択することで、「ハーセプチン+パージェタ+タキサン」治療を選択した ...

 

同じく「エンハーツ」治療に関しては、Phase 3試験『DESTINY-Breast06』のトップラインデータが2024年9月までに入手予定であることも第一三共が発表している。『DESTINY-Breast06』試験では、HER2低発現HR陽性の転移性乳がんに対する「エンハーツ」治療が無増悪生存期間において「単剤化学療法」を上回るかについて検証している。

【HER2低発現HR陽性乳がん:化学療法未治療】「エンハーツ」vs「化学療法」
DESTINY-Breast06                         HER2低発現HR陽性の転移性乳がんと診断され、内分泌療法で病勢進行が認められたが、化学療法未治療の女性が次の治療を考える場合、「エンハーツ」治療を選択することで、「単剤化学療法(カペシタビン、パク ...

 

さらに「エンハーツ」治療に関しては、Phase 3試験『DESTINY-Breast11』のトップラインデータが2025年3月までに入手予定であることも第一三共が発表している。『DESTINY-Breast11』試験では、切除可能なHER2陽性乳がんに対する「エンハーツ」治療が病理学的完全奏効率において「AC(ドキソルビシンシクロホスファミド)→THP(パクリタキセルハーセプチンパージェタ)」を上回るかについて検証している。

【HER2陽性乳がん:術前治療(pCR)】「エンハーツ」vs「AC→THP」
DESTINY-Breast11                         切除可能なHER2陽性乳がんと診断された女性が手術の前の治療を考える場合、「エンハーツ」治療が「AC(ドキソルビシン+シクロホスファミド)→THP(パクリタキセル+ハーセプチン+パージェタ)」治療を ...

 

2023年12月に開催されたSan Antonio Breast Cancer Symposium(以下、SABCS 2023)では、HER2チロシンキナーゼ阻害薬「ツカチニブ」のPhase 3試験の一つ『HER2CLIMB-02』が発表された。その結果、「ハーセプチンドセタキセル」治療を受けたことがあるHER2陽性進行乳がんに対する「ツカチニブカドサイラ」併用療法が、無増悪生存期間において「カドサイラ」単剤治療を上回ることが証明された。『HER2CLIMB-02』試験には日本も参加しており、2024年は、『HER2CLIMB-02』試験の論文発表、「ツカチニブ」の国内承認に関する動向が注目される。

【HER2陽性乳がん:二次治療(PFS)】「ツカチニブ+カドサイラ」vs「カドサイラ」
HER2CLIMB-02                         切除不能または転移性HER2陽性乳がんと診断され、「ハーセプチン+ドセタキセル(またはパクリタキセル)」治療を受けたことがある女性が次の治療を考える場合、「カドサイラ」治療に「ツカチニブ」の上乗せを選択する ...

 

同じくSABCS 2023では、「PI3K阻害薬イナボリシブ」のPhase 3試験『INAVO120』も発表され、SNS上でも注目を集めた。その結果、HR陽性HER2陰性PICK3CA変異陽性乳がんに対する「イナボリシブフェソロデックスイブランス」併用療法が、無増悪生存期間および生存期間において「フェソロデックスイブランス」併用療法を上回ることが証明された。『INAVO120』試験には日本は参加していないが、「イナボリシブ」の日本における今後の開発動向については注視したい。

【HR陽性PI3CA陽性乳がん:二次治療(PFS)】「イナボリシブ+イブランス+フェソロデックス」vs「イブランス+フェソロデックス」
INAVO120                              HR陽性HER2陰性PICK3CA変異陽性乳がんと診断され、術後補助療法加療中または終了1年以内に再発または未治療転移性の女性が治療を考える場合、「フェソロデックス+イブランス」治療に「PI3K阻害薬イナ ...

 

2023年2月4日、Phase 3試験『EMBRACA』などの結果に基づいて、「PARP阻害薬 ターゼナ」が「BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がん」を対象に承認申請された。11月27日に開催された厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会において承認が了承されており、2024年の早い段階での承認が期待されている。

【レジメン図鑑】ターゼナ(BRCA陽性乳がん)
「ターゼナ」はがん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんに対して、2024年1月18日に承認されたPARP阻害薬。この申請は、Phase3試験『EMBRACA試験』や国内Phase 1試験の結果に基づく。 【承認日】 2024年1月18日 ...

 

2023年9月30日までに、Phase 3試験『CAPItello-291』の結果に基づき、「AKT阻害薬 トルカプ」が「フェソロデックス」との併用療法として「HR陽性進行乳がん」を対象に承認申請されており、2024年内の承認が期待されている。

【レジメン図鑑】トルカプ+フェソロデックス(HR陽性乳がん)
「 トルカプ(一般名:カピバセルチブ)」は、2024年3月24日に、「内分泌療法後に増悪したPIK3CA、AKT1又はPTEN遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん」の効能・効果として、「フェソロデックス」との併用療法において承認されたAKT ...

 

3.食道がん・胃がん

2023年10月、ESMO 2023にてPhase 3試験『KEYNOTE-811』の結果が発表され(Lancet誌に同日掲載)、HER2陽性の進行胃がんに対する「ハーセプチン+化学療法+キイトルーダ」治療によって無増悪生存期間の延長が得られることが示された。本試験には日本も参加しており、承認申請については未発表であるが、本試験の結果に基づいたより早期の承認が待たれる。

【HER2陽性胃がん:一次治療(PFS)】「キイトルーダ+ハーセプチン+化学療法」vs「ハーセプチン+化学療法」
KEYNOTE-811(Lancet)                      HER2陽性の進行胃がんと診断された人が初めての治療を考える場合、「ハーセプチン+化学療法(5-FU+シスプラチンまたはCAPOX)」に「キイトルーダ」の上乗せを選択することで無増悪生存期間の延長が ...

 

一方、HER2陰性の進行胃がんに対しては「CAPOXキイトルーダ」は、2023年5月12日に承認申請されており、年内の承認が期待される。この申請は、2023年10月にLancet Oncology誌に発表されたPhase 3試験『KEYNOTE-859試験』の結果に基づいている。

【近未来のレジメン図鑑】キイトルーダ+CAPOX(胃がん)
「キイトルーダ+CAPOX」はHER2陰性の胃腺癌または食道胃接合部腺がんに対して、Phase 3試験『KEYNOTE-859試験』の結果に基づき、2023年5月12日に承認申請されており、3月4日の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会にて、承認の可否が審議される予定。 【承認申請 ...

 

HER2陰性の進行胃がんの中でも、Claudin 18.2陽性に対しては、化学療法(CAPOXおよびFOLFOX)への「抗Claudin 18.2抗体 ビロイ」の上乗せによって無増悪生存期間の延長が2023年に示されており、同年6月には「ビロイ」が化学療法の併用療法において「Claudin 18.2陽性のHER2陰性の進行胃がん」に対する承認申請を行っており、こちらも年内の承認が見込まれる。

【レジメン図鑑】ビロイ+CAPOX(胃がん)
「抗Claudin 18.2抗体 ビロイ」は「CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃がん」を対象に、2024年3月26に承認された抗CLDN18.2モノクローナル抗体。この承認は、Phase 3試験『SPOTLIGHT』および『GLOW』の結果に基づいている。『GLO ...
【レジメン図鑑】ビロイ+FOLFOX(胃がん)
「抗Claudin 18.2抗体 ビロイ」は、「CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃がん」を対象に2024年3月26日承認された抗CLDN18.2モノクローナル抗体。本承認は、Phase 3試験『SPOTLIGHT』および『GLOW』の結果に基づいている。『SPOT ...

 

食道がんについては、抗PD-1抗体「チスレリズマブ」の開発が進んでいる。進行食道扁平上皮がんの一次治療として「化学療法+ チスレリズマブ」治療が生存期間において「化学療法」を上回るPhase3試験『RATIONALE-306』の結果が2023年4月にLancet Oncology誌に発表されており、国内での早期承認が期待される。承認されれば、抗PD-(L)1抗体としては 国内7番目、食道がんに適応をもつ抗PD-1抗体としては3番目となる。

【食道がん:一次治療(OS)】「チスレリズマブ+化学療法」vs「化学療法」
RATIONALE-306(Lancet Oncol)                  切除不能、局所進行、再発または転移性食道扁平上皮がんと診断された人が初めての治療を考える場合、「化学療法」に「抗PD-1抗体 チスレリズマブ」の上乗せを選択することで、生存期間の延長が期待で ...

 

4. 大腸がん

まず、三次治療において2023年9月に承認申請された経口チロシンキナーゼ阻害薬「フルキンチニブ」の年内の承認が期待できる。「フルキンチニブ」は、『FRESCO』試験に加えて、2023年にLancet誌に発表された『FRESCO-2』試験では四次治療としての有用性も示している。

【近未来のレジメン図鑑】フルキンチニブ(大腸がん:三次治療)
「フルキンチニブ」が前治療歴を有する転移性大腸がんに対して、2023年9月29日に承認申請された。この申請は、Phase 3試験『FRESCO-2試験』および『FRESCO試験』の結果に基づく。 【承認申請日】 2023年9月8日 【効能及び効果】 前治療歴を有する転移性大腸癌 ...

 

KRAS G12C変異陽性例の三次治療には、2023目10月にNEJM誌に発表された『CodeBreak 300』試験では、「ベクティビックスルマケラス」治療が「ロンサーフ(またはスチバーガ)」治療を上回る無増悪生存期間を示した。今後の展開が期待される。

【KRAS陽性大腸がん:三次治療(OS)】「ベクティビックス+ルマケラス」vs「ロンサーフ」
CodeBreak 300(NEJM)                      KRAS G12C変異陽性の転移性大腸がんと診断され、何らかの治療を受けた人が次の治療を考える場合、「ベクティビックス+ルマケラス」治療を選択することで、「ロンサーフ(またはスチバーガ)」治療を選択 ...

 

一方、一次治療については、特定の集団で標準治療より高い効果が示されている。MSI-HまたはdMMRの転移性大腸がんの一次治療における「オプジーボヤーボイ」治療が標準化学療法を上回る無増悪生存期間が得られたことがPhase 3試験『CheckMate 8HW』より示され、1月20日、ASCO GI 2024にて発表された。また、小野薬品の発表によると、2025年3月までに承認申請予定。

【MSI-H大腸がん:一次治療(PFS)】「オプジーボ+ヤーボイ」vs「化学療法」
CheckMate 8HW                           遠隔転移を有するMSI-H/dMMR大腸がんと診断された人が初めての治療を考える場合、「オプジーボ+ヤーボイ」治療を選択することで、「化学療法」を選択した場合を上回る2年無増悪生存率が期待できる。 【 ...

 

さらに、BRAFV600E遺伝子変異陽性の転移性大腸がんの一次治療として、「FOLFOX」治療への「ビラフトビアービタックス」治療の上乗せが無増悪生存期間を延長するかを検証しているPhase 3試験『BREAKWATER』の結果が年内にも発表されると見込まれている。小野薬品の発表によると、「FOLFOXビラフトビアービタックス」治療の2025年3月までの申請を予定している。

【BRAF陽性大腸がん:一次治療(PFS)】「ビラフトビ+アービタックス+FOLFOX」vs「FOLFOX」
BREAKWATER                           遠隔転移を有するBRAFV600E遺伝子変異陽性の大腸がんと診断された人が初めての治療を考える場合、「FOLFOX」治療に「ビラフトビ+アービタックス」の上乗せを選択することで無増悪生存期間が延長されるかに ...

 

5.肝細胞がん

肝切除またはラジオ波焼灼療法後も、再発リスクが高い人では1年無再発生存率は65%ほどである。2023年10月にLancet誌に発表された『IMbrave050』試験の結果によると、肝切除またはラジオ波焼灼療法後に「テセントリクアバスチン」併用療法を最大1年間行うことで、無再発生存期間が延長されることが示された。中外製薬の発表によると、2024年12月までに「テセントリクアバスチンによる術後補助療法」の承認申請が見込まれている。

【肝細胞がん:術後治療(1年RFS)】「テセントリク+アバスチン」vs「経過観察」
IMbrave050(Lancet)                       再発リスクが高い切除可能な肝細胞がんと診断された人が肝切除またはラジオ波焼灼療法後の治療を考える場合、「テセントリク+アバスチン」治療を選択することで、1年無再発生存率の向上が期待できる。 【発表】 ...

 

肝切除またはラジオ波焼灼療法が適応とならず、「肝動脈化学塞栓療法(TACE)」に適応がある場合、「TACE」に「イミフィンジアバスチン」の上乗せを選択することで、無増悪生存期間の延長することが、2024年1月、ASCO GI 2024(米サンフランシスコ 開催)にて発表された『EMERALD-1』試験の結果より示された。「TACEイミフィンジアバスチン」治療のより早い承認申請が期待される。

【局所進行肝細胞がん:一次治療(PFS)】「TACE+イミフィンジ+アバスチン」vs「TACE」
EMERALD-1                           肝動脈化学塞栓療法(TACE)に適応がある肝細胞がんと診断された人が治療を考える場合、「TACE」に「イミフィンジ+アバスチン」の上乗せを選択することで、無増悪生存期間の延長が期待できる。 【学会発表】 20 ...

 

切除不能な肝細胞がんに対しては、現在、「テセントリクアバスチン」併用療法、「イミフィンジイジュド」併用療法、「イミフィンジ」単剤療法が承認されている。近い将来、同じく免疫チェックポイント阻害薬をベースとしたレジメンが治療選択肢として増えそうだ。

その一つが「オプジーボヤーボイ」治療である。「オプジーボヤーボイ」治療の「ネクサバール(またはレンビマ)」治療と有用性を比較検証するPhase 3試験『CheckMate 9DW』が現在進行中である。小野薬品の発表によると、2025年3月までに承認申請される予定である。

【肝細胞がん:一次治療(OS)】「オプジーボ+ヤーボイ」vs「ネクサバール」
CheckMate 9DW                           切除不能な進行肝細胞がんと診断された人が初めての治療を考える場合、「オプジーボ+ヤーボイ」治療を選択することで、「ネクサバール(またはレンビマ)」治療を選択した場合を上回る生存期間が期待できる。 【プ ...

 

もう一つが「抗PD-1抗体 チスレリズマブ」単剤治療である。2023年10月にJAMA Oncology誌に発表されたPhase3試験『RATIONALE-301』の結果、生存期間において「チスレリズマブ」単剤治療が「ネクサバール」治療に対する非劣性が示された。

【肝細胞がん:一次治療(OS)】「チスレリズマブ」vs「ネクサバール」
RATIONALE-301(JAMA Oncol)                  切除不能な進行肝細胞がんと診断された人が初めての治療を考える場合、「チスレリズマブ」治療を選択しても「ネクサバール」治療を選択した場合に劣らない生存期間が期待できる。 【発表】 2023年10月 ...

 

6. 胆道がん

現在、治癒切除不能な胆道がんに対するがん免疫療法として「イミフィンジゲムシタビンシスプラチン」療法が承認されている。2023年4月、Lancet誌に『KEYNOTE-966』試験の結果が発表された。本試験では切除不能な進行胆道がんに対する一次治療として「キイトルーダゲムシタビンシスプラチン」治療の生存期間に関する有用性が示された。本試験の結果に基づき、2023年6月には切除不能な胆道がんに対し、承認申請されており、2024年内の承認が見込まれている。

【近未来のレジメン図鑑】キイトルーダ+ゲムシタビン+シスプラチン(胆道がん)
「キイトルーダ+ゲムシタビン+シスプラチン」治療は、2023年6月13日、「切除不能な胆道がん」を対象に承認申請された治療レジメン。2024年5月9日に開催予定の厚生労働省 薬事審議会 医薬品第二部会にて、製造販売承認事項一部変更承認について報告される。 本申請はPhase3試験 ...

 

「FGFR2融合遺伝子を有する進行胆道がん」に対するFGFR阻害薬として、現在、「ペマジール」と「リトゴビ」が承認されている。2023年12月、「FGFR阻害薬 タスルグラチニブ」が「FGFR2融合遺伝子を有する進行胆道がん」を対象に承認申請されており、2024年内の承認が見込まれている。

【近未来のレジメン図鑑】タスルグラチニブ(FGFR2陽性胆道がん)
「タスルグラチニブ」は、2023年12月18日、「FGFR2融合遺伝子を有する進行胆道がん」を対象に承認申請されたFGFR選択的阻害薬。 【承認申請日】 2023年12月18日 【効能及び効果】 FGFR2融合遺伝子を有する進行胆道癌 【さらに詳しく】 FGFR2融合遺伝子陽性進 ...

 

7. 腎細胞がん

現在、中リスクまたは高リスクの淡明細胞型腎細胞がんの一次治療として「オプジーボヤーボイ」治療が承認されている。2023年5月にNEJM誌に発表された『COSMIC-313』試験によると、「オプジーボヤーボイ」治療にさらに「カボメティクス」の上乗せによって無増悪生存期間が延長する。本試験には日本の施設は参加していない。

【腎細胞がん:一次治療(PFS)】「カボメティクス+オプジーボ+ヤーボイ」vs「オプジーボ+ヤーボイ」
COSMIC-313(NEJM)                        中リスクまたは高リスクの淡明細胞型腎細胞がんと診断された人が初めての治療を考える場合、「オプジーボ+ヤーボイ」治療に「カボメティクス」の上乗せを選択することで、無増悪生存期間の延長が期待できる。 「カ ...

 

現在、進行腎細胞がんの一次治療は「抗PD-(L)1抗体療法+VEGF阻害薬」治療が標準治療であるが、抵抗性になった場合の治療は確立していない。2023年10月、ESMO2023にて「経口HIF-2α阻害薬  ベルズティファン」のPhase3試験『LITESPARK-005』が発表され、「ベルズティファン」単剤治療が「アフィニトール」単剤治療を上回る無増悪生存期間を示した。 2023年12月、「ベルズティファン」は、米国で承認された。『LITESPARK-005』試験には日本の施設も参加しており、日本においても承認が待たれる。

【腎細胞がん:二次治療(PFS、OS)】「ベルズティファン」vs「アフィニトール」
LITESPARK-005                           進行腎細胞がんと診断され、抗PD-(L)1抗体療法、VEGF阻害薬治療歴がある人が次の治療を考える場合、「経口HIF-2α阻害薬 ベルズティファン」治療を選択することで「アフィニトール」治療を選択した ...

 

8. 前立腺がん

2023年6月にLancet誌に発表されたPhase3試験『TALAPRO-2』の結果に基づき、2024年1月18日、「イクスタンジターゼナ」治療が「BRCA遺伝子変異陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がん」に対して、に承認された。

【レジメン図鑑】イクスタンジ+ターゼナ(BRCA陽性去勢抵抗性前立腺がん)
「イクスタンジ+ターゼナ」治療は「BRCA遺伝子変異陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がん」に対して、2024年1月18日に承認された経口レジメン。この申請は、Phase3試験『TALAPRO-2試験』の結果に基づく。 【承認日】 2024年1月18日 【効能及び効果】 BRCA遺伝子 ...

 

2023年8月、アンドロゲン受容体シグナル阻害薬治療歴を有する前立腺がんを対象とした『CONTACT-02』試験の結果、「テセントリクカボメティクス」治療が無増悪生存期間を延長させることが発表された。武田薬品の発表によると2024年3月までの承認申請を目標に置いている。

【去勢抵抗性前立腺がん:二次治療(PFS)】「テセントリク+カボメティクス」vs「イクスタンジ」
CONTACT-02                             転移性去勢抵抗性前立腺がんと診断され、アンドロゲン受容体シグナル阻害薬治療後に進行した男性が次の治療を考える場合、「テセントリク+カボメティクス」治療を選択することで、「イクスタンジ(またはザイティガ+ ...

 

9. 尿路上皮がん

2023年10月22日、NEJM誌に『CheckMate 901』試験の結果が発表され、 シスプラチン適格の進行尿路上皮がんに対する「オプジーボゲムシタビンシスプラチン」治療の無増悪生存期間および生存期間における有用性が示された。本試験の結果に基づいて、2023年12月18日、「オプジーボゲムシタビンシスプラチン」治療が「根治切除不能な尿路上皮がん」を対象に承認申請された。2024年内の承認が期待される。

【近未来のレジメン図鑑】オプジーボ+ゲムシタビン+シスプラチン(尿路上皮がん)
2023年12月18日、「オプジーボ+ゲムシタビン+シスプラチン」が「根治切除不能な尿路上皮がん」を対象に承認申請された。 【承認申請日】 2023年12月18日 【効能及び効果】 根治切除不能な尿路上皮癌 【さらに詳しく】 ニボルマブの根治切除不能な尿路上皮癌への適応拡大が申請 ...

 

2023年10月21日、NEJM誌に『THOR cohort 1』試験の結果が発表され、抗PD-1抗体を含む治療歴を有するFGFR遺伝子変異陽性転移性尿路上皮がんに対する「FGFR阻害薬 エルダフィチニブ」治療の生存期間における有用性が示された。本試験の結果に基づいて、2023年11月20日、「エルダフィチニブ」治療が「FGFR3遺伝子変異または融合遺伝子を有するがん薬物療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮がん」を対象に承認申請された。2024年内の承認が期待される。

【近未来のレジメン図鑑】エルダフィチニブ(FGFR3陽性尿路上皮がん)
「 エルダフィチニブ」は「FGFR3遺伝子変異または融合遺伝子を有するがん薬物療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮がん」に対して、2023年11月20日に承認申請されたFGFR阻害薬。この申請は、Phase 3試験『THOR試験』の結果に基づく。 【承認申請日】 2023年11 ...

 

2023年10月22日、『EV-302/KEYNOTE-A39』試験の結果がESMO2023にて発表され、進行尿路上皮がんに対する一次治療として「キイトルーダパドセブ」治療の無増悪生存期間および生存期間における有用性が示された。アステラス社の発表によると、2024年3月までに本試験の結果に基づいて、グローバルでの当局申請を実施する予定。

【尿路上皮がん:一次治療(OS、PFS)】「キイトルーダ+パドセブ」vs「化学療法」
EV-302/KEYNOTE-A39(NEJM)                  局所進行性または転移性尿路上皮がんと診断された人が初めての治療を考える場合、「キイトルーダ+パドセブ」治療を選択することで「化学療法(ゲムシタビン+シスプラチン(またはカルボプラチン)」を選択する ...

 

筋層浸潤性膀胱がんの周術期治療として「ゲムシタビンシスプラチン」治療への「オプジーボ±リンロドスタット」の上乗せの有用性を検証するPhase3試験『ENERGIZE』試験が進行中である。小野薬品の発表によると、2025年3月までに本試験の結果に基づいて、承認申請を実施する予定。

【筋層浸潤性膀胱がん:周術期治療(EFS)】「オプジーボ+化学療法→手術→オプジーボ」vs「化学療法→手術」
ENERGIZE                              筋層浸潤性膀胱がんと診断された人が手術前後の治療を考える場合、手術前に「化学療法(ゲムシタビン+シスプラチン)」に「オプジーボ」または「オプジーボ+リンロドスタット」の上乗せを選択し、手術後に「オプジーボ ...

 

10. 卵巣がん

高悪性度上皮性卵巣がんの一次治療として「化学療法+アバスチン」治療への「イミフィンジ」の上乗せ、それに続く維持療法として「アバスチン」治療への「イミフィンジリムパーザ」の上乗せによって無増悪生存期間が延長されることがPhase3試験『DUO-O』の結果、示され、2023年6月開催のASCO 2023にて発表された。『DUO-O』試験には日本の施設も参加しており、今後、日本での承認動向が注視される。

【卵巣がん:維持療法(PFS)】「イミフィンジ+アバスチン+化学療法→リムパーザ+イミフィンジ+アバスチン」vs「アバスチン+化学療法→アバスチン」
DUO-O                                高悪性度上皮性卵巣がんと診断された女性が初めての治療を考える場合、導入療法として「化学療法(パクリタキセル+カルボプラチン)+アバスチン」に「イミフィンジ」を上乗せし、終了後 「アバスチンによる維持療法」に ...

 

2023年12月、『MIRASOL』試験の結果が、NEJM誌に発表された。『MIRASOL』試験では、FRα高発現プラチナ抵抗性卵巣がんの「ミルベツキシマブ ソラブタンシン」治療が無増悪生存期間、生存期間における有用性が示された。MIRASOL』試験には日本の施設は参加していないが、「ミルベツキシマブ ソラブタンシン」の日本における開発は武田薬品が権利を取得しており、今後の開発動向が注視される。

【FRα高発現プラチナ抵抗性卵巣がん:二次治療】「ミルベツキシマブ ソラブタンシン」vs「化学療法」
MIRASOL(NEJM)                         FRα高発現卵巣がんと診断され、1〜3ラインの治療を受け、プラチナ製剤を含む化学療法に抵抗性となった女性が次の治療を考える場合、「ミルベツキシマブ ソラブタンシン」治療を選択することで、化学療法単剤(パク ...

 

11. 子宮頸がん

2023年10月に開催されたESMO2023において、『KEYNOTE-A18』試験の結果として、局所進行子宮頸がんへの「化学放射線療法+キイトルーダ」治療が無増悪生存期間において有用性が示された。本試験の結果を受けて、2024年1月12日、米国では「III期からIVA期の局所進行子宮頸がん」に対し、承認された。『KEYNOTE-A18』試験には日本の施設も参加しており、今後、日本での承認動向が注視される。

【局所進行子宮頸がん】「キイトルーダ+化学放射線療法」vs「化学放射線療法」
KEYNOTE-A18(Lancet)                       高リスク局所進行子宮頸がんと診断された人が初めての治療を考える場合、「化学放射線療法」に「キイトルーダ」の上乗せを選択することで、2年無増悪生存率の向上が期待できる。 本試験の結果に基づいて、20 ...

 

再発・進行子宮頸がんの一次治療においても選択肢が増えそうだ。日本でも2021年10月に「化学療法±アバスチンキイトルーダ」治療が承認されている治療分野ではあるが、「化学療法+アバスチンテセントリク」治療の有用性を検証した『BEATcc』試験結果が、2023年12月、Lancet誌に発表され、生存期間の延長が示された。『BEATcc』試験には日本の施設も参加しており、今後、承認動向が注視される。

【子宮頸がん:一次治療(OS)】「テセントリク+化学療法+アバスチン」vs「化学療法+アバスチン」
BEATcc(Lancet)                          再発または進行子宮頸がんと診断された女性が初めての治療を考える場合、「プラチナ製剤+パクリタキセル+アバスチン」治療に「テセントリク」の上乗せを選択することで、生存期間の延長が期待できる。 【発表】 ...

 

再発・進行子宮頸がんの一次治療が充実する中で、二次治療の進歩にも注目したい試験結果『innovaTV301』が、2023年10月のESMO2023にて発表された。抗体薬物複合体である「チソツマブ ベドチン」療法がこれまでの標準治療を上回る生存期間を示した。

【子宮頸がん:二次治療(OS)】「チソツマブ ベドチン」vs「化学療法」
innovaTV301                                進行または再発子宮頸がんと診断され、一次または二次治療を受けたことがある女性が次の治療を考える場合、「チソツマブ ベドチン」療法を選択することで「化学療法(トポテカン、ビノレルビン、ゲムシタビン ...

 

12. 子宮体がん

子宮体がんの一次治療が大きく変わりそうだ。2023年、プラチナ製剤を含む化学療法への抗PD-(L)1抗体の上乗せ効果を検証した試験結果が相次いで発表された。これらの試験結果に基づいて「キイトルーダ」、「テセントリク」、「イミフィンジ」について、2024年内の承認申請が期待される。「ドスタルリマブ」の有用性を検証した『RUBY』試験には日本の施設は参加していない。

【子宮体がん(pMMR、dMMR):一次治療(PFS)】「キイトルーダ+化学療法」vs「化学療法」

【子宮体がん(pMMR、dMMR):一次治療(PFS)】「キイトルーダ+化学療法」vs「化学療法」

KEYNOTE-868(NEJM)                       進行子宮体がんと診断された女性が初めての治療を考える場合、「カルボプラチン+パクリタキセル」治療に「キイトルーダ」の上乗せを選択することで、ミスマッチ修復機構ある場合でも、ない場合でも無増悪生存期間の ...
【子宮体がん:一次治療(PFS)】「イミフィンジ+化学療法」vs「化学療法」

【子宮体がん:一次治療(PFS)】「イミフィンジ+化学療法」vs「化学療法」

DUO-E(JCO)                           進行または再発子宮体がんと診断された女性が初めての治療を考える場合、「化学療法」に「イミフィンジ」の上乗せを選択し、「イミフィンジ+リムパーザによる維持療法」を選択することで無増悪生存期間の延長が期待できる ...
【子宮体がん:一次治療(OS、PFS)】「テセントリク+化学療法」vs「化学療法」

【子宮体がん:一次治療(OS、PFS)】「テセントリク+化学療法」vs「化学療法」

AtTEnd                               進行または再発子宮体がんと診断された女性が初めての治療を考える場合、「パクリタキセル+カルボプラチン」治療に「テセントリク」の上乗せを選択することで、無増悪生存期間の延長が期待できる。 【学会発表】 202 ...
【子宮体がん:一次治療(2年PFS、2年OS)】「ドスタルリマブ+化学療法」vs「化学療法」

【子宮体がん:一次治療(2年PFS、2年OS)】「ドスタルリマブ+化学療法」vs「化学療法」

RUBY(NEJM)                           進行または再発子宮体がんと診断された女性が初めての治療を考える場合、「カルボプラチン+パクリタキセル」治療に「ドスタルリマブ」の上乗せを選択することで、2年無増悪生存率、2年生存率の向上が期待できる。 特に ...