2023年、新しいがん治療レジメンの承認申請、Phase3試験結果の論文発表/学会発表/企業プレスリリースが数多く行われた。これらレジメンは、2024年内あるいは遠くない将来、日本において選択できる可能性が高い。ここでは近い将来、選択が可能になりそうながん治療についてまとめてみた。
1. 肺がん/2. 乳がん/3. 食道がん・胃がん/4. 大腸がん/5. 肝細胞がん/6. 胆道がん/7. 腎細胞がん/8. 前立腺がん/9. 尿路上皮がん/10. 卵巣がん/11. 子宮頸がん/12. 子宮体がん
1. 肺がん
2023年10月23日、Phase 3試験『AEGEAN』の結果がNEJM誌に発表された。『AEGEAN』試験では「イミフィンジ」について、切除可能な期非小細胞肺がんに対する「術前のイミフィンジ+化学療法および術後補助療法としてイミフィンジ」によって1年無イベント生存率の改善された。『AEGEAN』試験には日本も参加しており、2024年は、国内における「イミフィンジ」の適応拡大に関する動向が注目される。
2023年10月には、ESMO 2023にて、Phase 3試験『CheckMate 77T』の結果として、切除可能な期非小細胞肺がんに対する「術前のオプジーボ+化学療法および術後補助療法としてオプジーボ」によって1年無イベント生存率の改善が得られたことが発表された。小野薬品の発表によると、2024年3月までに承認申請を予定されている。
2023年12月15日、Phase 3試験『ALINA』の結果に基づいて、「アレセンサ」単剤治療が「ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんにおける術後補助療法」に対し、承認申請された。2024年内の承認が期待されている。
小野薬品の発表によると、Phase 3試験『CheckMate 73L』の結果に基づき、2025年3月までに承認申請する予定とのこと。『CheckMate 73L』試験では、切除不能なⅢ期非小細胞肺がん対する化学放射線療法後の維持療法として「オプジーボ+ヤーボイ」治療が無増悪生存期間において「イミフィンジ」治療を上回るかについて検証している。
中外製薬の発表によると、Phase 3試験『SKYSCRAPER-01』のトップラインデータが2024年3月までに入手、12月までに承認申請予定とのこと。『SKYSCRAPER-01』試験では、PD-L1高発現の進行非小細胞肺がんに対する「テセントリク+抗TIGIT抗体チラゴルマブ」治療が生存期間において「テセントリク」治療を上回るかについて検証している。
ESMO 2023では、Phase 3試験『TROPION-LUNG01』の結果として、既治療の進行非小細胞肺がんに対する「抗TROP2抗体薬物複合体ダトポタマブ デルクステカン」治療が、生存期間において「ドセタキセル」単剤治療を上回ったことが発表された。『TROPION-LUNG01』試験には日本も参加しており、本年も、論文発表、国内での動向が注目される。
2023年11月、Phase3試験『FLAURA2』の結果がNEJM誌に発表された。EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がんに対する「タグリッソ+化学療法」併用療法が、無増悪生存期間において「タグリッソ」単剤治療を上回った。本試験の結果に基づき、米国では適応追加申請が行われている。『FLAURA2』試験には日本も参加しており、2024年は、国内における「タグリッソ」の適応拡大に関する動向が注目される。
2023年11月17日、Phase 3試験『PAPILLON』の結果に基づいて、「EGFR/MET二重特異性抗体 ライブリバント」が、化学療法との併用療法として「EGFRエクソン20挿入変異陽性の非小細胞肺がん」を対象に承認申請された。2024年内の承認が期待されている。
ESMO 2023では、Phase 3試験『MARIPOSA』の結果として、EGFR変異陽性の進行非小細胞肺がんに対する「ライブリバント+EGFR-TKIラゼルチニブ」併用療法が、無増悪生存期間において「タグリッソ」単剤治療を上回ったことが発表されている。『MARIPOSA』試験には日本も参加しており、本年も、論文発表、国内での動向が注目される。
2023年10月、Phase3試験『MARIPOSA-2』の結果がESMO 2023およびAnnals of Oncology誌に発表された。「タグリッソ」治療が無効になったEGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がんに対する「ライブリバント+ラゼルチニブ+化学療法」併用療法が、無増悪生存期間において化学療法を上回った。『MARIPOSA-2』試験には日本も参加しており、今後、国内での動向が注目される。
EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がんの二次治療としては、「抗HER3抗体薬物複合体 パトリツマブ デルクステカン」治療の成績も2024年内に明らかになる可能性もありそうだ。第一三共の発表によると、Phase 3試験『HERTHENA-Lung02』のトップラインデータが2025年3月までに入手予定とのこと。『HERTHENA-Lung02』試験では、EGFR-TKI阻害薬治療中に病勢が進行したEGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がんに対する「パトリツマブ デルクステカン」治療が無増悪生存期間において「化学療法」を上回るかについて検証している。
第一三共の発表によると、Phase 3試験『DESTINY-Lung04』のトップラインデータが2025年3月までに入手予定とのこと。『DESTINY-Lung04』試験では、未治療のHER2遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺がんに対する「エンハーツ」治療が無増悪生存期間において「キイトルーダ+化学療法」を上回るかについて検証している。
2023年10月25日、Phase 1/2試験『TRIDENT-1』の結果に基づいて、「ROS1/TRK/ALKチロシンキナーゼ阻害薬 オータイロ」が、「ROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん」を対象に承認申請された。2024年1月11日Phase 1/2試験『TRIDENT-1』の結果がNEJM誌に発表された。2024年内の承認が期待されている。
2023年9月8日、Phase 2試験『GLORY』の結果に基づいて、「MET阻害薬 ハイイータン」が「MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を対象に承認申請された。2024年内の承認が期待されている。
2.乳がん
2024年は抗体に薬物を結合させたバイオ医薬品「抗体薬物複合体(Antibody-drug conjugate: ADC)」の臨床応用が本格化する。2020年3月に承認された抗HER2抗体薬物複合体「エンハーツ」はさらに新しい臨床試験成績が発表されており、抗Trop-2抗体薬物複合体は「トロデルビ」、「ダトポタマブ デルクステカン」の近々の承認申請も期待されている。
その他、初の「AKT阻害薬 トルカプ」や「PARP阻害薬 ターゼナ」は2024年内の承認が見込まれている。
2023年10月開催のESMO 2023にて、Phase 3試験『KEYNOTE-756』の結果として、ER陽性HER2陰性乳がんの周術期治療として「術前補助化学療法+キイトルーダ」および「術後補助内分泌療法+キイトルーダ」治療が、病理学的完全奏効率を改善させることが証明された。『KEYNOTE-756』試験には日本も参加しており、2024年は、『KEYNOTE-756』試験の論文発表、無病生存期間への影響、国内承認に関する動向が注目される。
2023年は、抗Trop-2抗体薬物複合体の国内での臨床応用への期待が高まった年でもあった。2023年8月、Phase 3試験『TROPiCS-02』の結果として、内分泌療法歴を有する HR陽性転移性乳がんに対する「抗Trop-2抗体薬物複合体 トロデルビ」治療が「化学療法」を上回る生存期間が得られたことがLancet誌に発表された。『TROPiCS-02』試験における無増悪生存期間の延長については2022年にJCO誌に発表されていた。「トロデルビ」は本邦でも開発が進行中であり、国内承認が期待されている。
「抗Trop-2抗体薬物複合体 トロデルビ」について、2024年1月30日、「全身療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん」を対象に承認申請された。
同じく抗Trop-2抗体薬物複合体として「ダトポタマブ デルクステカン」の開発も進んでいる。Phase3試験『TROPION-Breast01』の結果として、化学療法歴を有する HR陽性転移性乳がんに対する「ダトポタマブ デルクステカン」治療が「化学療法」を上回る無増悪生存期間が得られたことが2023年10月に開催されたESMO 2023にて発表された。『TROPION-Breast01』試験には日本も参加しており、2024年は、『TROPION-Breast01』試験の論文発表、「ダトポタマブ デルクステカン」の国内承認に関する動向が注目される。
「ダトポタマブ デルクステカン」については、Phase 3試験『TROPION-Breast02』のトップラインデータが2025年3月までに入手予定であることを第一三共は発表している。『TROPION-Breast02』試験では、抗PD-(L)1抗体の適応とならない進行トリプルネガティブ乳がんに対する「ダトポタマブ デルクステカン」治療が無増悪生存期間、生存期間において単剤化学療法を上回るかについて検証している。
第一三共の発表によると、Phase 3試験『DESTINY-Breast09』のトップラインデータが2025年3月までに入手予定とのこと。『DESTINY-Breast09』試験では、未治療のHER2陽性乳がんに対する「エンハーツ+パージェタ」併用療法または「エンハーツ」治療が無増悪生存期間において「ハーセプチン+パージェタ+タキサン」を上回るかについて検証している。
同じく「エンハーツ」治療に関しては、Phase 3試験『DESTINY-Breast06』のトップラインデータが2024年9月までに入手予定であることも第一三共が発表している。『DESTINY-Breast06』試験では、HER2低発現HR陽性の転移性乳がんに対する「エンハーツ」治療が無増悪生存期間において「単剤化学療法」を上回るかについて検証している。
さらに「エンハーツ」治療に関しては、Phase 3試験『DESTINY-Breast11』のトップラインデータが2025年3月までに入手予定であることも第一三共が発表している。『DESTINY-Breast11』試験では、切除可能なHER2陽性乳がんに対する「エンハーツ」治療が病理学的完全奏効率において「AC(ドキソルビシン+シクロホスファミド)→THP(パクリタキセル+ハーセプチン+パージェタ)」を上回るかについて検証している。
2023年12月に開催されたSan Antonio Breast Cancer Symposium(以下、SABCS 2023)では、HER2チロシンキナーゼ阻害薬「ツカチニブ」のPhase 3試験の一つ『HER2CLIMB-02』が発表された。その結果、「ハーセプチン+ドセタキセル」治療を受けたことがあるHER2陽性進行乳がんに対する「ツカチニブ+カドサイラ」併用療法が、無増悪生存期間において「カドサイラ」単剤治療を上回ることが証明された。『HER2CLIMB-02』試験には日本も参加しており、2024年は、『HER2CLIMB-02』試験の論文発表、「ツカチニブ」の国内承認に関する動向が注目される。
同じくSABCS 2023では、「PI3K阻害薬イナボリシブ」のPhase 3試験『INAVO120』も発表され、SNS上でも注目を集めた。その結果、HR陽性HER2陰性PICK3CA変異陽性乳がんに対する「イナボリシブ+フェソロデックス+イブランス」併用療法が、無増悪生存期間および生存期間において「フェソロデックス+イブランス」併用療法を上回ることが証明された。『INAVO120』試験には日本は参加していないが、「イナボリシブ」の日本における今後の開発動向については注視したい。
2023年2月4日、Phase 3試験『EMBRACA』などの結果に基づいて、「PARP阻害薬 ターゼナ」が「BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がん」を対象に承認申請された。11月27日に開催された厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会において承認が了承されており、2024年の早い段階での承認が期待されている。
2023年9月30日までに、Phase 3試験『CAPItello-291』の結果に基づき、「AKT阻害薬 トルカプ」が「フェソロデックス」との併用療法として「HR陽性進行乳がん」を対象に承認申請されており、2024年内の承認が期待されている。
3.食道がん・胃がん
2023年10月、ESMO 2023にてPhase 3試験『KEYNOTE-811』の結果が発表され(Lancet誌に同日掲載)、HER2陽性の進行胃がんに対する「ハーセプチン+化学療法+キイトルーダ」治療によって無増悪生存期間の延長が得られることが示された。本試験には日本も参加しており、承認申請については未発表であるが、本試験の結果に基づいたより早期の承認が待たれる。
一方、HER2陰性の進行胃がんに対しては「CAPOX+キイトルーダ」は、2023年5月12日に承認申請されており、年内の承認が期待される。この申請は、2023年10月にLancet Oncology誌に発表されたPhase 3試験『KEYNOTE-859試験』の結果に基づいている。
HER2陰性の進行胃がんの中でも、Claudin 18.2陽性に対しては、化学療法(CAPOXおよびFOLFOX)への「抗Claudin 18.2抗体 ビロイ」の上乗せによって無増悪生存期間の延長が2023年に示されており、同年6月には「ビロイ」が化学療法の併用療法において「Claudin 18.2陽性のHER2陰性の進行胃がん」に対する承認申請を行っており、こちらも年内の承認が見込まれる。
食道がんについては、抗PD-1抗体「チスレリズマブ」の開発が進んでいる。進行食道扁平上皮がんの一次治療として「化学療法+ チスレリズマブ」治療が生存期間において「化学療法」を上回るPhase3試験『RATIONALE-306』の結果が2023年4月にLancet Oncology誌に発表されており、国内での早期承認が期待される。承認されれば、抗PD-(L)1抗体としては 国内7番目、食道がんに適応をもつ抗PD-1抗体としては3番目となる。
4. 大腸がん
まず、三次治療において2023年9月に承認申請された経口チロシンキナーゼ阻害薬「フリュザクラ」の年内の承認が期待できる。「フリュザクラ」は、『FRESCO』試験に加えて、2023年にLancet誌に発表された『FRESCO-2』試験では四次治療としての有用性も示している。
KRAS G12C変異陽性例の三次治療には、2023目10月にNEJM誌に発表された『CodeBreak 300』試験では、「ベクティビックス+ルマケラス」治療が「ロンサーフ(またはスチバーガ)」治療を上回る無増悪生存期間を示した。今後の展開が期待される。
一方、一次治療については、特定の集団で標準治療より高い効果が示されている。MSI-HまたはdMMRの転移性大腸がんの一次治療における「オプジーボ+ヤーボイ」治療が標準化学療法を上回る無増悪生存期間が得られたことがPhase 3試験『CheckMate 8HW』より示され、1月20日、ASCO GI 2024にて発表された。また、小野薬品の発表によると、2025年3月までに承認申請予定。
さらに、BRAFV600E遺伝子変異陽性の転移性大腸がんの一次治療として、「FOLFOX」治療への「ビラフトビ+アービタックス」治療の上乗せが無増悪生存期間を延長するかを検証しているPhase 3試験『BREAKWATER』の結果が年内にも発表されると見込まれている。小野薬品の発表によると、「FOLFOX+ビラフトビ+アービタックス」治療の2025年3月までの申請を予定している。
5.肝細胞がん
肝切除またはラジオ波焼灼療法後も、再発リスクが高い人では1年無再発生存率は65%ほどである。2023年10月にLancet誌に発表された『IMbrave050』試験の結果によると、肝切除またはラジオ波焼灼療法後に「テセントリク+アバスチン」併用療法を最大1年間行うことで、無再発生存期間が延長されることが示された。中外製薬の発表によると、2024年12月までに「テセントリク+アバスチンによる術後補助療法」の承認申請が見込まれている。
肝切除またはラジオ波焼灼療法が適応とならず、「肝動脈化学塞栓療法(TACE)」に適応がある場合、「TACE」に「イミフィンジ+アバスチン」の上乗せを選択することで、無増悪生存期間の延長することが、2024年1月、ASCO GI 2024(米サンフランシスコ 開催)にて発表された『EMERALD-1』試験の結果より示された。「TACE+イミフィンジ+アバスチン」治療のより早い承認申請が期待される。
切除不能な肝細胞がんに対しては、現在、「テセントリク+アバスチン」併用療法、「イミフィンジ+イジュド」併用療法、「イミフィンジ」単剤療法が承認されている。近い将来、同じく免疫チェックポイント阻害薬をベースとしたレジメンが治療選択肢として増えそうだ。
その一つが「オプジーボ+ヤーボイ」治療である。「オプジーボ+ヤーボイ」治療の「ネクサバール(またはレンビマ)」治療と有用性を比較検証するPhase 3試験『CheckMate 9DW』が現在進行中である。小野薬品の発表によると、2025年3月までに承認申請される予定である。
もう一つが「抗PD-1抗体 チスレリズマブ」単剤治療である。2023年10月にJAMA Oncology誌に発表されたPhase3試験『RATIONALE-301』の結果、生存期間において「チスレリズマブ」単剤治療が「ネクサバール」治療に対する非劣性が示された。
6. 胆道がん
現在、治癒切除不能な胆道がんに対するがん免疫療法として「イミフィンジ+ゲムシタビン+シスプラチン」療法が承認されている。2023年4月、Lancet誌に『KEYNOTE-966』試験の結果が発表された。本試験では切除不能な進行胆道がんに対する一次治療として「キイトルーダ+ゲムシタビン+シスプラチン」治療の生存期間に関する有用性が示された。本試験の結果に基づき、2023年6月には切除不能な胆道がんに対し、承認申請されており、2024年内の承認が見込まれている。
「FGFR2融合遺伝子を有する進行胆道がん」に対するFGFR阻害薬として、現在、「ペマジール」と「リトゴビ」が承認されている。2023年12月、「FGFR阻害薬 タスルグラチニブ」が「FGFR2融合遺伝子を有する進行胆道がん」を対象に承認申請されており、2024年内の承認が見込まれている。
7. 腎細胞がん
現在、中リスクまたは高リスクの淡明細胞型腎細胞がんの一次治療として「オプジーボ+ヤーボイ」治療が承認されている。2023年5月にNEJM誌に発表された『COSMIC-313』試験によると、「オプジーボ+ヤーボイ」治療にさらに「カボメティクス」の上乗せによって無増悪生存期間が延長する。本試験には日本の施設は参加していない。
現在、進行腎細胞がんの一次治療は「抗PD-(L)1抗体療法+VEGF阻害薬」治療が標準治療であるが、抵抗性になった場合の治療は確立していない。2023年10月、ESMO2023にて「経口HIF-2α阻害薬 ベルズチファン」のPhase3試験『LITESPARK-005』が発表され、「ベルズチファン」単剤治療が「アフィニトール」単剤治療を上回る無増悪生存期間を示した。 2023年12月、「ベルズチファン」は、米国で承認された。『LITESPARK-005』試験には日本の施設も参加しており、日本においても承認が待たれる。
8. 前立腺がん
2023年6月にLancet誌に発表されたPhase3試験『TALAPRO-2』の結果に基づき、2024年1月18日、「イクスタンジ+ターゼナ」治療が「BRCA遺伝子変異陽性の転移性去勢抵抗性前立腺がん」に対して、に承認された。
2023年8月、アンドロゲン受容体シグナル阻害薬治療歴を有する前立腺がんを対象とした『CONTACT-02』試験の結果、「テセントリク+カボメティクス」治療が無増悪生存期間を延長させることが発表された。武田薬品の発表によると2024年3月までの承認申請を目標に置いている。
9. 尿路上皮がん
2023年10月22日、NEJM誌に『CheckMate 901』試験の結果が発表され、 シスプラチン適格の進行尿路上皮がんに対する「オプジーボ+ゲムシタビン+シスプラチン」治療の無増悪生存期間および生存期間における有用性が示された。本試験の結果に基づいて、2023年12月18日、「オプジーボ+ゲムシタビン+シスプラチン」治療が「根治切除不能な尿路上皮がん」を対象に承認申請された。2024年内の承認が期待される。
2023年10月21日、NEJM誌に『THOR cohort 1』試験の結果が発表され、抗PD-1抗体を含む治療歴を有するFGFR遺伝子変異陽性転移性尿路上皮がんに対する「FGFR阻害薬 エルダフィチニブ」治療の生存期間における有用性が示された。本試験の結果に基づいて、2023年11月20日、「エルダフィチニブ」治療が「FGFR3遺伝子変異または融合遺伝子を有するがん薬物療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮がん」を対象に承認申請された。2024年内の承認が期待される。
2023年10月22日、『EV-302/KEYNOTE-A39』試験の結果がESMO2023にて発表され、進行尿路上皮がんに対する一次治療として「キイトルーダ+パドセブ」治療の無増悪生存期間および生存期間における有用性が示された。アステラス社の発表によると、2024年3月までに本試験の結果に基づいて、グローバルでの当局申請を実施する予定。
筋層浸潤性膀胱がんの周術期治療として「ゲムシタビン+シスプラチン」治療への「オプジーボ±リンロドスタット」の上乗せの有用性を検証するPhase3試験『ENERGIZE』試験が進行中である。小野薬品の発表によると、2025年3月までに本試験の結果に基づいて、承認申請を実施する予定。
10. 卵巣がん
高悪性度上皮性卵巣がんの一次治療として「化学療法+アバスチン」治療への「イミフィンジ」の上乗せ、それに続く維持療法として「アバスチン」治療への「イミフィンジ+リムパーザ」の上乗せによって無増悪生存期間が延長されることがPhase3試験『DUO-O』の結果、示され、2023年6月開催のASCO 2023にて発表された。『DUO-O』試験には日本の施設も参加しており、今後、日本での承認動向が注視される。
2023年12月、『MIRASOL』試験の結果が、NEJM誌に発表された。『MIRASOL』試験では、FRα高発現プラチナ抵抗性卵巣がんの「ミルベツキシマブ ソラブタンシン」治療が無増悪生存期間、生存期間における有用性が示された。MIRASOL』試験には日本の施設は参加していないが、「ミルベツキシマブ ソラブタンシン」の日本における開発は武田薬品が権利を取得しており、今後の開発動向が注視される。
11. 子宮頸がん
2023年10月に開催されたESMO2023において、『KEYNOTE-A18』試験の結果として、局所進行子宮頸がんへの「化学放射線療法+キイトルーダ」治療が無増悪生存期間において有用性が示された。本試験の結果を受けて、2024年1月12日、米国では「III期からIVA期の局所進行子宮頸がん」に対し、承認された。『KEYNOTE-A18』試験には日本の施設も参加しており、今後、日本での承認動向が注視される。
再発・進行子宮頸がんの一次治療においても選択肢が増えそうだ。日本でも2021年10月に「化学療法±アバスチン+キイトルーダ」治療が承認されている治療分野ではあるが、「化学療法+アバスチン+テセントリク」治療の有用性を検証した『BEATcc』試験結果が、2023年12月、Lancet誌に発表され、生存期間の延長が示された。『BEATcc』試験には日本の施設も参加しており、今後、承認動向が注視される。
再発・進行子宮頸がんの一次治療が充実する中で、二次治療の進歩にも注目したい試験結果『innovaTV301』が、2023年10月のESMO2023にて発表された。抗体薬物複合体である「チソツマブ ベドチン」療法がこれまでの標準治療を上回る生存期間を示した。
12. 子宮体がん
子宮体がんの一次治療が大きく変わりそうだ。2023年、プラチナ製剤を含む化学療法への抗PD-(L)1抗体の上乗せ効果を検証した試験結果が相次いで発表された。これらの試験結果に基づいて「キイトルーダ」、「テセントリク」、「イミフィンジ」について、2024年内の承認申請が期待される。「ドスタルリマブ」の有用性を検証した『RUBY』試験には日本の施設は参加していない。