
IMpassion130(NEJM)
遠隔転移を有し、トリプルネガティブ乳がんと診断された女性が初めての治療を考える場合、「アブラキサン」治療に「テセントリク」の上乗せを選択することで無増悪生存期間の延長が期待できる。PD-L1陽性の人の場合、無増悪生存期間だけでなく、生存期間の延長も期待できる。
「テセントリク+アブラキサン」治療を受けた人の56.0%が治療に奏効し、「プラセボ+アブラキサン」治療を受けた人の奏効率 45.9%より有意に高かった(オッズ比 1.52% (1.16-1.97) p=0.002)。
「テセントリク+アブラキサン」治療を受けた人の15.9%(vs 8.2%)が有害事象のため治療を中止した。
本試験結果に基づいて、2018年12月21日、「テセントリク」について「転移性または切除不能な局所進行乳がん」への適応拡大の承認申請が行われ、2019年9月20日、「PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又 は再発乳癌」 を効能・効果として承認された。
【発表】
2018年10月20日
【試験名】
IMpassion130(Phase 3)〔NCT02425891/jRCT2080223227〕
【試験参加国】
日本(愛知県がんセンター、福島県立医科大学附属病院、群馬県立がんセンター、広島市立広島市民病院、広島大学病院、北海道がんセンター、兵庫医科大学病院、相良病院、聖マリアンナ医科大学病院、東海大学医学部付属病院、熊本大学病院、京都大学医学部附属病院、三重大学医学部附属病院、東北大学病院、新潟県立がんセンター新潟病院、岡山大学病院、那覇西クリニック、大阪医療センター、大阪国際がんセンター、近畿大学病院、埼玉医科大学国際医療センター、埼玉県立がんセンター、静岡がんセンター、国立がん研究センター中央病院、聖路加国際病院、都立駒込病院、がん研有明病院)、米国、アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、コスタリカ、チェコ、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、グアテマラ、香港、ハンガリー、韓国、ラトビア、メキシコ、ノルウェー、パナマ、ポーランド、ルーマニア、ロシア、シンガポール、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、台湾、タイ、トルコ、ウクライナ、英国
【原著】
N Engl J Med 2018; 379:2108-2121. [PubMed: 30345906]
【さらに詳しく】
- 進行トリプルネガティブ乳癌に対するアテゾリズマブと nab-パクリタキセル〔NEJM日本語アブストラクト〕
- 切除不能TN乳がん1次治療でのアテゾリズマブ+nab-パクリタキセル〔ケアネット〕
- 免疫チェックポイント阻害薬であるアテゾリズマブとnab-PTXの併用は未治療の進行/転移性乳がんの予後を改善する(解説:矢形 寛 氏)〔ケアネット〕
- アテゾリズマブ+ nab-パクリタキセル、トリプルネガティブ乳がんでPFS延長(IMpassion130)/ESMO 2018〔ケアネット〕
- 免疫療法薬アテゾリズマブがトリネガ乳がんの生存を改善〔海外医療情報リファレンス〕
- 進行TNBCの1次治療でアテゾリズマブとnab-パクリタキセルの併用療法が有効性示す【ESMO2018】〔日経メディカル〕
- 乳がんの第Ⅲ相試験で初! 免疫治療が奏効〔Medical Tribune〕
【こちらの図鑑も合わせて見る】
【添付文書における表記】
国際共同第Ⅲ相臨床試験(IMpassion130試験)
転移・再発乳癌に対する全身性の前治療歴のない転移・再発又は局所進行性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の乳癌患者902例(日本人65例を含む)を対象に、本剤+nab-パクリタキセル併用療法(本剤群451例)とプラセボ+nab-パクリタキセル併用療法(プラセボ群451例)の有効性及び安全性を比較する第Ⅲ相試験を実施した。本剤840mgは2週間間隔、nab-パクリタキセル100mg/m2は週1回(28日を1サイクルとし、第1、8、15日目に投与)で点滴静注した。なお、本剤群では、有害事象又はその他の理由によりどちらかの薬剤を中止した後は、本剤又はnab-パクリタキセルを同一の用法及び用量で病勢進行まで投与継続した。ランダム化された患者のうち、PD-L1陽性患者集団369例(日本人25例を含む)において、本剤群(185例)でプラセボ群(184例)と比較して主要評価項目注15)の一つである無増悪生存期間の有意な延長が認められ(ハザード比[95%信頼区間]:0.62[0.49, 0.78]、P<0.0001[層別log-rank検定])、中央値[95%信頼区間]は本剤群で7.46[6.70, 9.23]カ月、プラセボ群で4.96[3.81, 5.55]カ月であった。
PD-L1陽性患者集団のうち、本剤とnab-パクリタキセルが投与された185例(日本人12例を含む)において180例(97.3%)に副作用が認められた。主な副作用(20%以上)は、脱毛症109例(58.9%)、疲労85例(45.9%)、悪心83例(44.9%)、貧血49例(26.5%)、下痢41例(22.2%)、好中球減少症41例(22.2%)、末梢性ニューロパチー39例(21.1%)等であった。
注15)主要評価項目はランダム化されたすべての患者集団及びPD-L1陽性患者集団における無増悪生存期間及び全生存期間とした。