【日本がん対策図鑑】「3秒でわかる」がん治療の図書館

「日本がん対策図鑑」は、急速に進展するがん治療の臨床試験結果を体系的に整理し、患者や医療関係者が治療選択肢を検討する際に活用できる「図鑑」として構築されたプラットフォームです。2016年1月の開設以来、がん治療の進歩を「どこよりも早く、3秒で分かる」形で可視化することを目指しています。

ここでは、同図鑑の構造的階層、臨床試験結果を評価・図解するための厳格な基準、そして最新の承認情報や治験動向を追跡する仕組みについて紹介します。

1. 設立の背景とコア・コンセプト

設立の経緯

2015年12月、免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」が「非小細胞肺がん」に適応拡大されました。この頃から、がん治療成績の発表数が指数関数的に増加し、がん治療は加速度的な進歩を遂げました。このように、臨床試験結果が次々と発表される一方で、それらを記憶することが困難になってきました。そこで、治療の進歩を日々整理し発信することを目的として「日本がん対策図鑑」を開設しました。

3つのコア・コンセプト

  • 治療選択の支援: がん治療の選択肢を増やしたい時にしらべる図鑑
  • 即時性と明解性: どこよりも早く、3秒で分かる
  • 歴史の編纂: 人類のがん克服の歴史を編纂する
    • 「日本がん対策図鑑」の更新は、人類ががんを克服した時にその役割を終えます。その時が早く来ることを願い、日々更新していきたいと思います。

 

2. コンテンツの構造と階層化

情報は、臨床試験の最小単位から標準治療の推奨まで、以下の4つの階層で論理的に構造化されています。

階層 名称 定義・単位
第1階層(最小単位) 図鑑 臨床試験の個別の発表論文に基づき作成されるコンテンツ。
第2階層 トライアル図鑑 同一の臨床試験で複数回にわたり論文発表が行われる場合、試験単位でまとめたもの。
第3階層 レジメン図鑑 複数の臨床試験結果に基づき日本で承認された「治療レジメン」単位のまとめ。
第4階層 標準治療図鑑 学会が発表する推奨度に基づき、患者セグメント単位でレジメン間を比較・評価したもの。

 

3. 編集方針

臨床試験の結果を客観的に示すため、試験のデザインや主要評価項目に応じた図解ルールが設けられています。

図鑑化の選定基準

  1. がん治療の選択に直接的に役立つ内容であるか。
    • 国内未承認の治療についても取り扱っています。
    • ネガティブな結果も治療選択を決定する上で重要なので取り扱っています。
  2. 図解に必要な数値データが公表されているか。

図解の基本ルール

  • 無作為化比較試験(RCT):
    • 生存期間(中央値)の成績がある場合: 横棒グラフで表示。新治療(赤色)と対照群(黒色)を対比させる。
    • 生存期間(中央値)の成績がない場合: 5年生存率などを円グラフで表示。
  • 単剤(Single Arm)試験:
    • 図鑑化の条件:奏効率に加え、「奏効期間」「無増悪生存期間(PFS)」「生存期間(OS)」のうち2つ以上のデータ公表が必要。

薬剤名

  • 薬剤名は編集長の独断で、一般名と商品名のどちらがメジャーかという基準で使い分けています。
  • 基本的に分子標的薬や抗体のように「~ニブ」「~マブ」で終わるものが多く、混乱しやすいため、販売名を中心に用いています。
    • 承認前は販売名が決まっていないので一般名を用いています。
  • 薬剤ごとに「タグ」を付与しています。タグをクリックすると、薬剤ごとのライブラリとして閲覧できます。

 

4. 新治療誕生までの追跡プロセス

「日本がん対策図鑑」は、新治療が臨床現場に届くまでのプロセスを以下の6段階で追跡し、情報を更新します。

1) 治験情報: 国内で進行中のPhase 3試験などの開始。

2) 治験結果(TopLine Results): 製薬企業による速報。

3) 治験結果(学会発表): 海外学会などでのデータ公表。

4) 治験結果(論文発表→図鑑): 論文の発表。

5) 承認申請: 日本国内での承認申請。

6) 承認: 国内での承認。

 

5. 疾患別カテゴリーと最新の注力領域

本プラットフォームは、肺がん、乳がん、胃がん、大腸がん、血液がんといった主要ながん種から、希少がん、小児がんに至るまで広範な領域をカバーしています。

最近の主要なトピックス(2026年1月時点の事例)

  • 肺がん: EGFR陽性MET増幅陽性肺がんに対する「タグリッソ+サボリチニブ」の第2次治療(SACHI試験)や、PD-L1発現量別の1次治療レジメンの整理。
  • 乳がん: TROP2抗体薬物複合体サシツズマブ ゴビテカンの有効性を検証する「ASCENT試験群」や、HER2陽性手術不能・再発乳がんに対する「ツカイザ+ハーセプチン+カペシタビン」治療の承認間近な動向。
  • 尿路上皮がん: アジア人における「キイトルーダ+パドセブ」併用療法の有効性。
  • 血液がん: びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対するエプコリタマブ(EPCORE試験群)の検証。

 

6. プラットフォームとしての多角的役割

単なる情報閲覧サイトに留まらず、以下の3つの役割を果たしています。

  • ライブラリ機能: 膨大な臨床試験データを整理・蓄積。
    • 更新日は論文発表日に設定。「人類とがんとの闘い」の歴史をがん種ごとに辿ることができます。
    • 臓器別の「カテゴリ」を開設しており、臓器別にアーカイブ化しています。
    • 臓器別に独自に作成されたオリジナルのシンボルアイコンを用いています。
  • ニュース機能:
    • 「日本がん対策新聞」としてX(旧Twitter)Facebookを通じて最新の更新情報を配信しています。
  • ハブ機能:
    • 原著論文やPubMedへのリンク提供。
    • 臨床試験登録ナンバー(NCT、jRCT)との紐付け。
    • コンテンツ内の「さらに詳しく」は、ケアネット日経メディカルなどの関連記事とリンクしています。

 

本図鑑は、個別の論文(点)からトライアル(線)、そして標準治療(面)へと情報を統合していくことで、がん治療の全体像を提示し、最適な治療選択を支援するインフラストラクチャとしての役割を担っています。